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極東4th  作者: 霧島まるは
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呪文のように

「随分…雰囲気が変わったね」


 早紀は、見つかった。


 彼女のステルスを持ってしても「いる」と理解されている相手には、完璧な効力を発揮しているわけではない。


 ましてや、相手は零子という目を持っていて。


 そう、トゥーイだ。


 授業の隙間に、早紀を見にきたのか。


「……」


 黙ったまま、身構える。


 タミには、既に彼女の秘密を知られているのだ。


 いつ、他に漏れるか分からない。


 それに。


 特に、学校で気をつけるように真理に言われていた。


 イデルグの双子とタミと──この二人に。


「青が…カシュメルの屋敷に来たって本当かい?」


 早紀の無言など気にせず、トゥーイは質問をする。


「………」


 うつむいて、唇をなお閉ざした。


 真理から、引き出せなかったに違いない。


 彼女から、情報を得ようというのか。


 二人の、強い眼差しに射られながら、早紀は小さくなることだけに努めた。


「青が…人間の女を連れてきたって…本当かい?」


 質問が。


 変わった。


 刹那、早紀の脳裏を駆け抜けるあの光景。


 門の向こう側。


 伊瀬と、その腕の中の──


 唇を、強く噛みしめる。


 顔も上げない。


 早紀でいたい、早紀でいたい。


 呪文のように、それだけを繰り返す。


 そのためなら、どんな荒れ地にだってずっと伏せている。


 質問と、視線が消えた。


 早紀が顔を上げずにはいられないほど、はっきりと。


 トゥーイは、教室の入口の方を振り返っていた。


 真理が、いた。


 いや──来てくれた。



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