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極東4th  作者: 霧島まるは
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唯一

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 女が、扉を開ける。


 真理を、呼ばずにはいられないのだ。


 普段、決して自分から近づいてこない女が、唯一、彼を必要とする瞬間。


 真理は。


 飛び起きながら、早紀を見ていた。


 自分に、対等の好意を求めた女。


 答えは、まだ彼の中にはない。


 だが、彼女はカシュメル――真理のものだ。


 それを今日、イデルグに叩きつけた。


 興奮をおさえきれない早紀が、彼を見上げる。


 鎧が、彼女を振り回している、いつもは見られない顔。


 蝕が、早紀をこうさせる。


 蝕が自分を――


 指先で。


 額の円をなぞる。


 黒い魔気に包まれながら、早紀が一瞬だけ、泣きそうな顔をした。


 すぐに、すべては包み隠される。


 そして、美しくも硬い鎧となるのだ。


 真理は、手を伸ばした。


 鎧の胸に、だ。


 拒まれるはずなどない。


 鎧は、真理の手を飲み込む。


 そのまま進むと、彼自身を受け入れのだ。


 吸い付くような内側は、とても静かで。


 早紀が、自分を隠している証拠だった。


 何も、彼とつなぎたくないと、抵抗しているように思える。


『行くぞ』


 一言――声をかけた。


 たった、一言。


 返事は、ない。


 彼女の声は、聞こえないまま。


 だが。


 真理を包む鎧の内側が――微かに収縮した気がした。



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