⑤
……ジークフリートもしくは従者の繰り返しが両手で数えられなくなった頃。
第3の男が登場した。
微かにノックの音と、ゆっくりと開けられた扉。
白銀色の髪に深いアイスブルー。
おまけに白装束って……。
見るからに寒そうだ……。
男は私の横にいたジークフリートを一瞥し「殿下の御様子は?」と
聞いてきた。
でんか?
……ん?
電化、じゃないよね?
いま、殿下って言った?
このおじさん。
殿下ってだれだろ?
ジークフリートじゃないよね?
まさか。
もし、100に1の可能性もないとは思うけどジークフリートが殿下だった
らこんな聞き方しないよね。きっと。
「今のところ御変わりありませんね。処分は済みましたか?」
しょ、処分?
処分って言ったよな?
何を処分するんだっ……。
やっぱり、怖い、ジークフリートってば。
「……ぁあ、済んだ。……殿下は……」
徐に白銀色の男がこっちを向いた。
おじさんかと思ってたら、違った。
まだ、若くて……30台かな?
ジークフリートとそんなに変わらないくらいだ、多分。
……なんでおじさんに見えたかというと、この人目の下に隈が出来まくって
るんだ。
5歳は老けて見える。
「ぁれ?(誰?)」
おもわずジークフリートに確認する。
「殿下……御可哀想にッ……」
ぎゅむ。
ぎゅむぎゅむぎゅー……。
……うん。
苦しい。
大の大人に抱きつかれると、苦しいんだね……?
「抱き潰すつもりですか?」
ジークフリートが白銀色の男を離す。
「……ふりぃー、……ぁれ?……ぇぇ……(ジークフリート、誰?……これ)」
ぜぃぜぃ……と肩で息をする。
ようやく少し喋れるようになったばかりなのに、私を殺す気なのか、この人わ。
「お忘れか?宰相の任にあるリュシアス=C=ダーティアルですよ、我が君」
「……ぃゅ……ぃあ?」
「…リュシアスです、殿下?」
……ぁぁ、やっぱし。
殿下って私かぁ……。
……ジークフリートの扱いが丁寧だからある程度身分とか高いんだろうな~とは思ってたけど。
殿下……。
殿下って普通は王族の尊称だよ?
ぅわ~。
……そしてさいしょうって何?
多分偉いんだろうけど。
「りぃー」
「…………」
ん?
間違えてないよね?
反応がない。
「…………ぁぁぁ」
……うん?
震え始めた。
……うわ、なんか、頬染めて……。
どこの乙女(死語!?)ですか……。
肌が白いからよく分かる。
薔薇色ですよ。
頬と耳朶が。
――― Wikipediaより抜粋 ―――
宰相:
「首相」が「内閣を構成する閣僚(大臣)のうち首席の者」を意味するのに対し、「宰相」は「特に君主に任ぜられて宮廷で国政を補佐する者」を意味する。