⑨
「その子どうしたの、ジーク」
「家族とはぐれたようです」
「ふぅん?」
「……」
「放っておく訳にもいきませんから、街の方まで連れて行こうかと」
むぅ。
男の子は一言も話さない。
……どころか、視線も合わせようとしない。
ジークのズボンをぎゅっと握ったままだ。
「名前なんていうの?」
「……」
ぅあ。
こういうのは苦手だ。
「カート」
「落ち着いたら話してくださるのでは?……どの子に一緒に乗ってもらいま
しょう?」
「あ」
そういう問題があったかぁ。
うーん。
…………うーん。
「明日、考えよう。今日はもう寝る」
「「「畏まりまして」」」
「……」
男の子はジークから離れなかったので、一緒の寝袋です。
翌朝。
まだ一言も話さない男の子に騎竜に会わせてみたら。
「赤い花」と相性が良かったらしい。
どれも駄目なんてことにならなくてほっと一息吐いた。
「ヴァル」
-なんだ、主よ-
「昨日の闇化獣、元はなんだったか分る?」
-……熊、だろう。はっきりとは分らぬ。年月が経つほど闇に呑まれ、
姿が消える-
「……この近くに闇化獣がいるって言う噂は聞かないから気になってね」
-移動してきたものかも知れぬ。あまり気にするな-
「分った」
スリスリスリ……。
ヴァルの頭をなでる。
トカゲは嫌いなんだけど、ヴァルは可愛いなぁ。
-我はトカゲではない……-
あれ?
思っただけで判るものなのか?
-顔に出ているゾ-
スリスリスリスリ……。
誤魔化す為、思う存分に撫でくり倒した頃。
朝ごはんが出来たとリーナが教えてくれました。