①
目の前にあるお茶を一口。
うん。
美味しい。
次にふんわりとしたケーキを食べようと口を開けたら……。
ケーキが。
お皿ごと宙に浮かんで。
……………………盗られました。
「そんなにゆっくりしていていいのか?今日だろうが、調停式は」
レ・ナ・―・ドぉッ~~!
「いいんだ。僕じゃなくてシリルがするんだし。返せ」
私のシフォンケーキ!
作ってもらうの大変だったんだぞ、それ!
「ん。美味しいな。クリームも甘すぎないし」
食べるなあぁぁぁ!!
それは前祝で強請り倒したケーキなんだぞ。
目の前でひょいパク、ひょいパクっと口の中に消えていく。
20cm近い身長差が恨めしい。
「駄目だって。そんなに暴れると汚れつく」
「お前が返せば暴れたりしてない。返せってば」
飛ぶけど奴はリーチを生かして届かない場所まで上げてしまった。
もう少しというところで届かない絶妙な場所だ。
「うん。うまかった」
皿が帰ってくる。
美味かった。
……ウマカッタ……だと?
あああああ。
空っぽになってるし!
結局お茶だけ飲む羽目になった。
……お茶も美味しいんだけどね。
「だぁあああ。んなことしている場合じゃなかった。ほら、行くぞ」
はぁ?
レナードがぐいぐい引っ張るので思わず立ち上がる。
「皇太子連れて来いっていわれてるんだよ」
急ぐぞ。
そういって走り出したレナードに引きずられながら、後で覚えてろォォ……
と思ったのは当然だと思って欲しい。