⑩
番外編④にこれの前回分があります。
読まなくても分かりますが、お暇でしたらそちらもどうぞ。
現在地:離宮内自室。
唐突ですが。
猛烈にお腹が空きました。
真術使うのは精神力な筈なのに。
私の場合は真術を使うと精神力も減るけどお腹も減るらしい。
携帯食料がなかったので、諦めて客間にいる(だろう)カートのところへ向
かう。
カートだったら非常時用の携帯食料を持っているはずだ。
後から怒るかもしれないけど、ジークにバレルよりはマシだ。
そうと決まれば客間に移動。
「カート、いる~?」
マリーは治療のあと気を失ったので、一応カートに面倒見てもらうように
頼んでいたし。
衛士に頼んで中にはいる。
「カートぉ」
部屋を見渡して。
あ、いた。ソファーで寛いでる。
いた……けれど。
ジークフリートも、いる。
……ぅ……あちゃぁ……。
もう帰ってきてたんだね。
「あ、ジーク、お帰り~」
「ただいま戻りました、ハロルド様」
にっこりもしない。
うぅ。
無表情鉄面皮は怖いよぉ。
「どうなさいました?ハル様」
言いたい。
けど。
言えない。
反対側に危険人物がいるから。
「マリーまだ寝てる?」
「えぇ。お疲れの様子で。私もマドレーン嬢が参られたら部屋に戻るつもり
です」
う。
もう少し待ってれば良かった。
あぁぁ。
「ジークは?」
「警備隊に渡してきましたので、閣下に報告をした帰りです」
「そお」
「お話ならばちょうどマドレーンも帰ってきたことですし、殿下のお部屋で
伺いましょう」
……はい。
口元だけ見れば微笑っているのに、目が笑ってないというか、青筋が怖いで
す。