⑧
帰り道。
夕方でも結構人はいるらしく。
人ごみの中を歩く。
……歩く。
………………歩く。
時折美味しそうな匂いがするけど、立ち止まってそっちを見ようとすると、
右後方上部から「余所見しないで帰りますよ」と声が降って来るので。
…………歩く……。
あ。
いきなり足を止めた私にまたかという感じで口を開くジーク。
正確には、開きかけた。
開きかけて、止めた。
走り始めた私の横を危険がないようにガードしながら後を付いて来る。
ずざしゃぁああああ。
目標地点へ走りこんで、回し蹴りをしようとしたら。
ジークが私を引っ掴み、カートに向かって放り投げたのだ。
えぇ。
反射神経で倒れるのは死守しましたよ。ふふふふふ……。
「なんだぁ?」
「にーちゃんが変わりに金を払ってくれるのかよ?」
「ぁあ?怪我したくなきゃさっさとどくんだな」
……etc……etc……。
しばらく放っておいたけど。
完璧に三流悪党の台詞ですよ。
ジークも呆れているし。
怪我してるお姉さんをカートが確保したのを確認して。
ああ。
面倒だから、さっさと終わらせよう。
小型爆弾壱号を取り出す。
最小出力にしてッと。
ころころころ。
ころころころころころころ。
「おいおい、子供つれて遊んでんじゃねーぜ」
「ぼくぅ、さっさとママのとこ……ひぅ……」
バシュッっと言う音とともに捕縛用の網が3人を纏めて捕まえ、地面に叩き付ける。
うん。
狙い道理。
「……ジーク。それさっさと片付けて警備隊詰め所に放り込んで。
カートとこのお姉さんと先に帰っとくから」
「では、竜車で御帰り下さい。ファレル様、お願いします」
竜車:馬より一回り体の大きい竜が引く馬車です。
通常の馬車よりスピードが速く、且つ揺れも殆どないため人気がある
一回の使用金額は馬車の5倍が相場となる。