第九章 軍部の撤退と封印
この異常事態を受け、軍の最高幹部は緊急会議を開いた。二度にわたる人的損失、しかも十六名もの兵士や研究者が消息を絶つという前代未聞の事態に、さすがの軍部も対応に苦慮した。
「この島での基地建設計画は中止とする。ただし、この件については極秘扱いとし、外部への情報漏洩は厳禁とする」
司令官の決定により、調査は完全に打ち切られることになった。生存者の捜索も、装備の回収も、すべて放棄された。島民には「測量作業の完了」という名目だけが告げられ、真相については何の説明もなされなかった。
軍の撤退後、島は表面的には平穏を取り戻した。しかし、オランダ洞窟にまつわる恐怖は一層深刻なものとなり、村長や長老たちは「二度と誰も近づけてはならない」と厳命した。ガジュマルの大木のそばにも新たに祠が建立され、洞窟を鎮めるための祈祷が定期的に行われるようになった。
島の神女である比嘉おばあが中心となって、毎月の新月の夜には供養の儀式が執り行われた。白い衣装に身を包んだ島の女性たちが、ガジュマルの根元で線香を焚き、消えた人々の霊魂の安息を祈った。
「あの洞窟で命を落とした方々の魂が、安らかに眠れますように」
比嘉おばあの祈りの声が夜の静寂に響く。参列した島民たちも心から冥福を祈り、二度とこのような悲劇が起こらないことを願った。




