第七章 不可解な足音と落盤事故
調査を再開してしばらくすると、隊員の一人が奇妙な音を聞いたと報告した。最初は誰も気に留めなかったが、その音は次第に明確になり、「コツ、コツ、コツ…」という一定のリズムを伴って周囲の壁に反響し始めた。
「この音は水滴ではありませんね」
測量隊員が首をかしげた。音は確実に足音のようなリズムを持っており、しかも徐々に近づいてくるように感じられた。
「まさか、この洞窟に他に誰かいるのでしょうか」
「そんなはずはありません。島民は誰も近づかないはずです」
一行は互いに不安そうに目を合わせた。この洞窟で大きな動物が生息できるとは考えにくい。それでは、この足音の正体は一体何なのだろうか。
若い測量隊員の田中が、その謎を解明すべく奥へと先行することを申し出た。坂崎博士は危険を感じて制止しようとしたが、田中は既に狭い通路へと進んでいった。
「田中君、一人では危険だ!」
博士と他の隊員が後を追ったが、その時、足元の岩盤がぐらりと動いた。
「危ない!」
叫び声と共に、田中青年は突然の落盤に巻き込まれた。大きな岩が崩れ落ち、彼の悲鳴が洞窟の奥深くに響いた。落盤の衝撃で他の隊員たちも危うく巻き込まれそうになったが、間一髪でその場から逃れることができた。
カンテラと懐中電灯の光で照らしても、崩れた岩の下には深い縦穴が口を開けているだけで、田中の姿も声も全く確認できなかった。必死に名前を呼び続けたが、応答はない。ただ時折、遙か下の方から水滴が落ちる音だけが聞こえてくる。まるで底なしの深淵がそこに開いているようだった。
「田中君!返事をしてくれ!」
坂崎博士の声が洞窟内に響いたが、戻ってくるのは虚しい反響だけだった。縦穴の深さは計り知れず、救出することは不可能に思われた。
この事故によって、一行は調査の続行を断念せざるを得なくなった。一人の犠牲者を出したまま、彼らは重い心で洞窟から引き返すことになったのである。




