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【前編】オランダ洞窟の怪奇(異世界への扉) ~徐福が大和朝廷へ紡いだ「始皇帝の二千年帝国」~  作者: 如月妙美


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第五章 初めての洞窟内部調査

 洞窟調査の日は、干潮の時刻に合わせて実行された。坂崎博士と軍の測量隊員、そして案内として島の若い男性二名が、慎重にオランダ洞窟へと向かった。

 アダンの木々が生い茂る海岸線を抜け、足場の悪い岩礁を慎重に歩きながら洞窟の入り口に到着した。入り口は予想よりも狭く、ごつごつした岩肌には海藻や貝の殻がこびりついていて、足元が非常に滑りやすかった。

「気をつけてください。足を滑らせれば大怪我をします」

 案内の島民が注意を促した。一行は懐中電灯とカンテラを灯し、探検用の装備を身に着けて、狭い通路を少しずつ奥へと進んでいった。

 洞窟内は外気よりもかなり涼しく、湿った空気が流れている。壁面には苔や貝殻の破片、海水による浸食の跡があり、進むにつれて足下には湿った砂と小石が積もっていた。南国特有の陽気な気温との落差が、何ともいえぬ不安感を呼び起こす。

「この洞窟は思っていたより深いようですね」

 測量隊員の一人がつぶやいた。通路は緩やかに下降しており、海面下へと続いているように感じられた。

 最初の曲がり角を過ぎると、少し開けた空間が現れた。そこは天井が高く、岩の隙間から滴り落ちる水が床のぬかるみをさらに広げている。坂崎博士がカンテラの灯りをかざすと、何かが地面に転がっているのが見えた。

「これは…」

 慎重に近づいて調べると、それは古い革靴の破片と、金属製の装飾が施されたボタンのようなものだった。明らかに数百年前の西洋の品物である。

「間違いない。これはオランダ時代の遺物だ」

 坂崎博士は興奮を抑えながら、それらを慎重に拾い上げ、持参した袋に収めた。他の隊員たちはカンテラの灯りを洞窟の壁に向け、何か他にも手がかりがないか探していた。

 すると、岩壁に赤茶色の顔料で描かれた奇怪な絵がうっすらと浮かび上がった。人のような動物のような、判別のつかない生き物が歪んでうごめくような線があちこちに走り、見ているだけで不気味な感覚に襲われる。

「いったい誰が、いつこんな絵を描いたのでしょうか…」

 隊員たちは息を殺してささやき合った。この瞬間から、彼らはオランダ洞窟の奥深くに潜む"何か"の存在を、まざまざと感じ始めていたのだった。

 壁画をよく観察すると、西洋人らしき人物像も描かれていることが分かった。帆船や十字架のような図柄もあり、明らかにオランダ人たちが描いたものと思われた。しかし、それらの絵は恐怖や絶望を表現しているかのように歪んでおり、見る者に不安を与えるものばかりだった。

「彼らは最後まで、何かを後世に伝えようとしていたのかもしれません」

 坂崎博士は記録用のノートに、壁画の位置と内容を詳細に記録した。学問的な興味と同時に、消えた人々への哀悼の気持ちも込めて。


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