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【前編】オランダ洞窟の怪奇(異世界への扉) ~徐福が大和朝廷へ紡いだ「始皇帝の二千年帝国」~  作者: 如月妙美


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第二章 潮騒に包まれる禁忌の洞窟

 オランダ洞窟は島の南部、険しい岩の岬に位置している。満潮時には波しぶきが入り口を叩き、乾いた岩肌をわずかに濡らす程度だが、台風が接近すると荒れ狂う波が洞窟の奥深くまで流れ込むという。

 アダンの木々が密生する海岸を抜けると、細い獣道のような小径が断崖の上へと伸びている。その途中からはサトウキビ畑が一望でき、背後には真っ赤なハイビスカスの群落が広がっている。島特有の甘い潮風が吹き、遠くからクイナの声が聞こえてくる。しかし、その断崖を下ると突然に空気が変わるのだった。

 潮の香りに混じって、どこか生温く、そしてカビ臭い匂いが漂ってくる。洞窟の入り口は高さが二メートルほど、幅は三メートル程度で、周囲にはごつごつした岩が突き出していて歩きにくい。照りつける南国の太陽もそこだけは陰を作り、薄暗い雰囲気が一層不気味さを醸し出している。

 入り口付近を覗き込もうとすると、足元にヤドカリがちょこちょこと姿を現す。白い貝殻を背負ったヤドカリたちが暗い岩場の中で、まるで迷子の灯火のようにちらちらと動き回る。洞窟の入り口から見える外の光は、美しい珊瑚礁の海と一面の青空を映し出している。だが一歩でも奥へと踏み込めば、底知れぬ闇がすべてを飲み込むように広がっているのだ。

 島の長老たちは代々、口を揃えて警告してきた。

「あの洞窟には、ずっと昔から人ならぬものが棲んでおる。近づくものではない」

 伝説によれば、行方不明となったオランダ人たちは、その"何か"に捕らえられて命を奪われたか、あるいは自らその誘いに従って奥深くへと向かい、二度と戻らぬ世界へ旅立ったのだと囁かれている。

 ある夏の夕暮れ時、漁から戻った老漁師の又吉じいさんが、仲間にこんな話をした。

「わしが子供の頃、台風の晩に洞窟の方から変な音が聞こえたんじゃ。まるで人が呻いているような、でも人間の声ではないような…そんな不気味な音でな。翌朝見に行ったら、洞窟の入り口に見たこともない白い花が咲いておったよ」

「白い花?」若い漁師が身を乗り出した。

「ああ。島にはない花じゃった。それも一晩で枯れてしもうたがな。まるであの洞窟が何かを告げようとしているかのようじゃった」

 こうした話は島中に知れ渡り、人々の恐怖心を一層掻き立てるのだった。


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