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気象予報センターで働いていたら、有能な先輩に溺愛されました  作者: 双鶴


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第7話 胸の奥のざわめきと、気づかれない想い

翌日。

予報センターは、台風対応の疲れがまだ残っているような空気だった。


澪は資料をまとめながら、昨日の黒川の言葉を思い返していた。


「……他の男に、そんな顔を向けるな」


思い出すだけで胸が熱くなる。

あれは、どういう意味だったのだろう。


(……黒川さん、あんなふうに言うなんて)


頬が熱くなるのを感じたそのとき。


「黒川さん、昨日の進路予測、本当にすごかったです!」


明るい声がフロアに響いた。


澪が顔を上げると、

広報担当の女性・佐伯が黒川のデスクに立っていた。


「黒川さんの判断、社内でも話題ですよ。

 あの冷静さ、尊敬しちゃいます」


佐伯はにこやかに笑い、黒川に身を寄せるように話しかけている。


黒川は淡々と答える。


「……仕事をしただけだ」


「でも、あの状況であれだけ判断できる人、なかなかいませんよ?」


佐伯は楽しそうに笑い、黒川の腕に軽く触れた。


澪の胸が、きゅっと痛んだ。


(……え? なに、これ)


黒川は特に気にした様子もなく、資料を渡している。


澪は自分でも驚くほど、胸の奥がざわついていた。


(どうして……こんなに苦しいの?

 ただ話してるだけなのに)


視線を逸らそうとしたが、どうしても黒川の方を見てしまう。


そのとき。


黒川がふと、澪の方を見た。


一瞬だけ、目が合う。


澪は慌てて視線を落とした。


(……見られた?)


心臓が跳ねる。


***


休憩室。

澪は紙コップのコーヒーを握りしめながら、深呼吸を繰り返していた。


(……私、どうしちゃったんだろう)


黒川が他の女性と話しているだけで、胸が苦しくなるなんて。


「白石」


突然名前を呼ばれ、澪はびくっと肩を震わせた。


振り返ると、黒川が立っていた。


「……顔色が悪い。大丈夫か」


「だ、大丈夫です……!」


声が裏返る。

黒川は眉をひそめた。


「無理をするな」


「無理なんて……してません」


「している」


黒川は一歩近づく。

距離が近い。

深夜のデータ室のときと同じ、息が触れそうな距離。


「……何かあったのか」


その声は、いつもより少しだけ柔らかかった。


澪は言えなかった。


(“黒川さんが他の女性と話してるのが嫌だった”なんて……言えるわけない)


「……なんでも、ないです」


黒川は澪をじっと見つめた。

その視線は、逃げ場を奪うほどまっすぐだった。


「白石」


「……はい」


「君が何を考えているのか、分からないときがある」


澪は息を呑んだ。


「……すまない。だが、気になる」


胸が跳ねる。


(……気になる? 私のことが?)


黒川は視線を逸らし、低く言った。


「……君が、他の誰かに心を向けているように見えると……落ち着かない」


澪の心臓が止まりそうになった。


(……それって)


黒川は続けた。


「だから……無理をするな。俺に言え」


澪は言葉が出なかった。

ただ、胸の奥が熱くて、苦しくて、嬉しかった。


──この日、澪が初めて感じた“嫉妬”と、

黒川が初めて見せた“揺らぎ”が、

二人の距離をさらに縮めていくことになる。


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