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気象予報センターで働いていたら、有能な先輩に溺愛されました  作者: 双鶴


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第17話 玄関前で止まった言葉と、触れた頬

黒川に手を引かれ、澪は自宅マンションの前まで来ていた。


夜風は冷たいのに、

澪の手は黒川のコートの中で温かいままだった。


(……ずっと手を離さないまま、ここまで来た)


胸が苦しいほど熱い。


マンションの入口に着くと、

黒川はゆっくりと立ち止まった。


「……着いたな」


「はい……」


黒川は澪の手を離さない。


むしろ、少しだけ強く握った。


「澪」


名前を呼ぶ声が、驚くほど優しい。


「……さっきの続きだ」


澪の心臓が跳ねた。


(続き……?

 “限界だ”って言った、その続き……?)


黒川は澪の顔をじっと見つめた。


「お前が……誰かと笑っているのを見ると……胸がざわつく」


「……黒川さん」


「お前が誰かに触れられるのが……嫌だ」


澪は息を呑んだ。


黒川は一歩近づき、

澪の頬に手を伸ばした。


触れる直前で、指先が震える。


「……触れていいか」


まただ。

また、その聞き方。


「……はい」


黒川の指先が頬に触れた瞬間、

澪の体がびくっと震えた。


黒川はその反応に気づき、

目を細めた。


「……震えている」


「ち、ちが……」


「違わない」


黒川は澪の頬を包み込み、

ゆっくりと顔を近づけた。


距離が、息が触れるほど近い。


「澪」


「……はい」


「……お前のことを──」


その瞬間。


マンションの自動ドアが開き、

住人が出てきた。


「こんばんは〜」


澪と黒川は反射的に距離を取った。


黒川の表情が一瞬だけ曇る。


(……今、言おうとした……?)


住人が去ると、

黒川は深く息を吐いた。


「……すまない。続きは……」


澪は思わず言葉を遮った。


「つ、続き……聞きたいです」


黒川は驚いたように目を見開いた。


そして、

ゆっくりと澪の手を取った。


「……今言ったら、戻れなくなる」


「戻れなくて……いいです」


黒川の喉がわずかに震えた。


「……澪」


名前を呼ぶ声が、

今までで一番甘かった。


黒川は澪の手を強く握り、

低く、抑えきれない声で言った。


「……お前を、離したくない」


澪の胸が熱くなる。


(……黒川さん……)


黒川は続けようとした。


「俺は──」


しかし、また言葉を飲み込んだ。


「……今日は帰れ。休め」


「で、でも……」


「反論は聞かない」


黒川は澪の手を離し、

ゆっくりと背を向けた。


「……続きは、必ず話す」


澪は胸を押さえた。


(……黒川さんの“続き”って……)


玄関の前に残された温度だけが、

二人の距離がもう戻れないことを教えていた。


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