表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
気象予報センターで働いていたら、有能な先輩に溺愛されました  作者: 双鶴


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/20

第16話 迎えに来た理由と、抑えきれない声

その日の夕方。

澪は同僚に誘われ、軽い飲み会に参加することになった。


(……断ろうかと思ったけど)


黒川のことを意識しすぎて、

逆に距離を置きたくなったのだ。


「白石さん、最近黒川さんと仲良いよね」


「えっ……そ、そんなこと……」


「いやいや、あの黒川さんがあんなに気にかけるなんて珍しいよ」


澪は返事に困り、グラスを持ち上げた。


(……意識しないようにしよう)


そう思っても、

黒川の声や、触れた手の温度が頭から離れない。


***


飲み会が終わる頃には、

澪は少しふらついていた。


(……飲みすぎたかも)


店を出て、夜風に当たる。


「タクシー呼ぼうか?」


「だ、大丈夫です……歩けます」


そう言った瞬間。


「澪」


背後から低い声が落ちた。


振り返ると──

黒川晴臣が立っていた。


スーツの上着を羽織り、

息を少しだけ乱している。


「く、黒川さん……?」


黒川は澪の腕を掴み、

ぐっと引き寄せた。


「……何をしている」


「え……飲み会で……」


「知っている」


黒川の声は低く、抑えているのに怒っていた。


「なぜ一人で帰ろうとする」


「だ、だって……」


「危ないだろう」


澪は胸が跳ねた。


(……心配してくれたの?)


黒川は澪の顔を覗き込み、

眉をひそめた。


「……顔が赤い。飲みすぎだ」


「す、すみません……」


「謝るな」


黒川は澪の手を取り、

自分のコートのポケットに入れた。


「……冷たい」


「えっ……」


「手が冷たいと言っている」


黒川は澪の手を包み込みながら歩き出した。


(……な、なにこれ……)


心臓が痛いほど鳴っている。


***


少し歩いたところで、

黒川がふいに立ち止まった。


「澪」


「……はい」


「……迎えに来た理由を言う」


澪は息を呑んだ。


黒川は数秒黙り、

覚悟を決めたように澪を見つめた。


「……心配だった」


澪の胸が熱くなる。


「飲み会に行くと聞いたときから……ずっと落ち着かなかった」


「黒川さん……」


「誰と話すのか、誰の隣に座るのか……

 考えるだけで、胸がざわついた」


澪の心臓が跳ねる。


黒川は続けた。


「……お前が、誰かに笑いかけるのが……嫌だった」


澪は言葉を失った。


(……そんなふうに思ってくれてたの?)


黒川は澪の手を強く握り、

低く、抑えきれない声で言った。


「……もう、限界だ」


澪は息を呑んだ。


黒川は視線を逸らし、

苦しそうに言葉を続けた。


「……これ以上、お前が他の男といるのを……見たくない」


夜風が静かに吹き抜ける。


澪の胸は、痛いほど熱かった。


──この夜、黒川の“限界”は初めて言葉になった。

そして澪は、その重さを真正面から受け止め始めていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ