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【パンケーキパニック】

 ここはとある田舎町のとある民家。その家のキッチンで二人の少女が睨み合っていた。

「絶対に負けない」

「こちらのセリフですわ」

 二人は拳を構える。

「せーのっ‼︎」

「「じゃんけん、ポン!」」

「何⁉︎ ここでパーだと⁉︎」

「ふふふ、どうやらお姉様のグーではわたくしのパーに手も足も出ないみたいですわね」

「くぅっ…まさかこんな手を使うなんて…」

「あはは! この勝負、わたくしの勝ちですわ! パンケーキ最後の一枚はわたくしのものですね」

「くそぉぉぉぉぉおおお‼︎ 僕のパンケーキぃぃぃ‼︎」

「…お姉ちゃんたち、何やってんの」

 昼間から大騒ぎしている二人の姉を、少女は冷ややかな目で見つめる。

「うわぁーん! アキィ〜、フユカが僕のパンケーキ取ったぁ‼︎」

「ちょっ、お姉様⁉︎ 最後の一枚はジャンケンで勝った方が食べるって二人で決めましたわよね? なに被害者ぶってるんですか⁉︎」

「そう…。二人でパンケーキ食べてたの…」

「そうなんですよ。お母様が焼いてくれて…はっ⁉︎」

「わーたーしぃーの分はぁ⁉︎⁉︎」

「「ご、ごめんなさい‼︎」」

 激昂した少女の怒りのチョップが姉たちに襲いかかった。


「あらあら、ちゃんと三人で分けられるように九枚焼いたのに」

「ねーひどいよねー。だから今二人には材料を買いに行かせてるの。大量に作らせて、今度はそれを全部独り占めするんだ。ぷんぷん」

「ふふふ、やっぱりあなたたち姉妹は仲がいいわね」

 頬を膨らませる娘を見て母は嬉しそうに微笑む。

「もぉ〜、なんで今そういう感想を抱くのさ〜」

「でも本当のことでしょう?」

「ま、まぁね」

 少女は照れ臭そうに頬をかく。

「いつまでも一緒だといいわね。お母さん、あなた達の幸せを心から願っているのよ」

「ん。わかってる」

 ガチャリ。玄関が開く音が聞こえた。

「ただいまですわ」

「待たせたなアキ。この僕が、お前に最っ高のパンケーキを振舞ってやる!」

「お姉様は料理下手ですわよね? せいぜいわたくしの足を引っ張らないで頂けます?」

「何言ってるんだ! この前麻婆豆腐を作ったじゃないか!」

「オムライスを作ろうとしてね⁉︎ 頭おかしいんじゃないですの⁉︎」

「なんだと‼︎」

「ほーら、喧嘩しないの。キッチンにある物好きだけ使っていいから、仲良く作りなさいね。アキもお姉ちゃんたちを手伝ってあげたら?」

「そだね。心配だから手伝うよ」

「ふ、妹よ。せいぜい足を引っ張らないように頑張るんだな」

「お前が言うな! …ですわ」


 パンケーキが山盛りに積まれた大きなお皿がテーブルに運ばれてきた。ほくほくと立つ湯気に混じって甘くて素敵な香りが漂う。その香りに少女たちは思わず深呼吸した。

「美味しそー‼︎」

「本当ですわね。…でもなんでところどころピザみたいなのが挟まっているんですの?」

「ふっふっふっ…ちょっと間違えたのさ‼︎」

「なんで自慢げなのー⁉︎ ていうか逆にこの材料でどうやって作ったの⁉︎」

「諦めましょうアキ。うちの長女はキングオブポンコツですわ」

「フユカはまた僕を愚弄する。姉妹最強のこの僕を」

「脳みそが筋肉でできているっていう比喩の言葉知ってます? 脳筋って言うんですけど」

 二人は犬歯剥き出しにしていがみ合う。

「あら! 沢山作ったのね」

「お前たちだけで作ったのか、偉いな」

 いい香りにつられて、仕事帰りの父と洗濯物を終えた母がやってきた。

「こんなに沢山あるのなら晩御飯はこれにしましょう。せっかくだから娘たちが作ってくれたパンケーキ、私も食べたいわ。ね、あなた」

「そうだね。ご馳走になってもいいかな?」

「「「うん!」」」

 仲良し家族はいつも一緒に晩御飯を食べる。みんなで食べるご飯は美味しくて、楽しい。

「このハート型のやつ、私が作ったんだよー」

「なぁハルナ。なんでパンケーキにピザが混ざっているんだい?」

「それは僕の傑作だ。是非ビールのつまみにでも」

「ピザってビールに合うの?」

「やっぱりフユカは器用ね。パンケーキがキレイにまんまるだわ」

「中にはストロベリージャムも入っていますので、何も付けずにそのままどうぞ」

「私が作ったパンケーキ、お兄ちゃんにも食べさせてあげたかったなぁ」

「きっとそのうち叶うわ。あの子は必ず帰ってくる」

「そうだぞ。ここがあいつの家なんだから」

「そうだよね!」

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