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第4話「竜が如く」

 島に来て最初の朝を迎えた。何というか特に変わったことはない普通の朝だ。


「ンモォ〜‼️」「コケーッ!コッコー!!」




 ・・・前言撤回。え、なにいまの?




 気になった俺は部屋を出て廊下の窓を見た。即座に状況を理解した。


 寮の裏手が広大な牧場になっていて、牛達が放牧されている。


「まるで海外アニメの世界だな・・・」


 朝から若干のカルチャーショックを受けつつ、朝の点呼に向かう。


「おはようさん、翔ちゃん‼︎いや〜すげえな‼︎寮の裏手に牧場があるなんて‼︎牛の鳴き声で起きちまったよ‼︎」


 この五月蝿い声は、香鳥だ。なんでこんな朝からハイテンションなんだよ。


「ああ・・・お、おはよう。」


 俺は香鳥のテンションに押されつつも返事をする。


「やあ、おはよう二人とも。昨日はよく眠れたかい?」


 手前の部屋から花村が出てきた。こいつも朝から爽やかすぎて、俺の目が潰れそうだ。


「おお‼︎さとちゃんおっはー‼︎モチロンぐっすりよ‼︎」


「ははっ、それはよかった。すでに昨晩の時点で朝食の準備は済ませておいたよ。点呼が終わったらみんなで食べよう。」




 3人で食堂へ向かうと、既に飛澤先生と倉春が待機していた。


「みんなおはよう。さてみんな揃ったのが確認できたから朝の点呼は完了だ。特に俺からの連絡はない。」


 昨日も思ったが点呼というよりいるかどうかのチェックだよなコレ。


「な、なあ二人は今日一日何をするんだ?」


 俺は朝食を食べながら、花村と香鳥に聞いてみた。


「そうだね、今日は港周辺散策しようかなと思っているよ。どうやら近くに商店や郵便局はあるみたいだから、生活に必要なものがどこで帰るか見ておこうかなと。」


 さすが花村だ。この時点で俺とは感覚が違う。もはや一人暮らし経験があるようにも思える。


「オレは島を一周してこようと思ってる‼︎スケボーを持ってきているから夕方くらいまでには帰ってこれるんじゃないかな〜」


 さすが香鳥だ。全く持って話が理解できない。


 スケボーがあるから大丈夫と思っているその神経が凄い。


「そ、そうなんだね・・・俺は今日自転車が届く予定だから待ってようかな。」


「そういえば倉春ちゃん。朝飯食わずに部屋に戻ってったけどいいのかな?」


「ああ、昨日聞いたら朝は食べないらしい。」


 俺は安堵した。正直、気まずくて顔も合わせたくない。


 しかしこれから毎日顔合わせるわけだ。はあ、嫌だな。


 ため息をつきながらも俺は朝食を食べ進めるのであった。




「しかし2人ともすげえよなあ。中学卒業したての人間とは思えないな。」


 部屋に戻った俺は改めて二人のスペックの高さに感心した。


 それと同時に、低スペックである自分に劣等感を感じた。本当にこの高校でやっていけるのだろうか。思い出したくはないが、中学の頃の記憶が蘇る。


「ちょっと横になろう・・・」


 記憶が蘇らないように俺は寝逃げした。




 昼を過ぎたぐらいで寮のインターホンが鳴った。


 やっべ、結構寝てしまった。もしかして荷物が届いたかな?


 俺は眠い目を擦って玄関に向かう。すると玄関には同い年くらいの青年が立っていた。身長は175Cmくらいの中肉中背。どこかクールで物静か、知的な雰囲気を醸し出している。


 もしかしてあと一人来るって話だった子かな?


「青空寮ってここであってる?」


 青年は俺を見るなりそう訪ねた。


「は、はい‼︎青空寮はここです‼︎えっと・・・どちら様ですか?」


「あ〜月影竜つきかげりょう。よろしく。」


 青年は少し気怠そうに挨拶をした。


「か、風切翔太郎です。」


「翔太郎ね。これからよろしく。」


 元気の無さはともかく、やっと普通っぽい人が来たみたいだ。


「それにしてもキミ、パッと見る限りこの高校に来るような人間とは思えないね。何か訳ありって感じかな?」




 本日2回目、前言撤回。




 何だこの失礼なヤツは⁉︎初対面の相手に言う台詞か⁉︎


「な、何なんですかいきなり⁉︎別にあなたには関係ないでしょ・・・」


「動揺かつ目を逸らしたと言うことは図星の証拠だね。正直、君がどんな理由でこの島に来たのか自分は興味無いよ。」


 コ、コイツ〜〜〜〜‼︎腹が立つ‼︎初対面の人間に腹が立ったのはこれで人生3度目だ。


「ごめんごめん。ついからかっただけ。許してくれ。できれば部屋の案内とこの寮のルールを教えて欲しい。」


 許せるかこの野郎‼︎いきなり失礼すぎるだろ。・・・ダメだ。色んな意味でコイツに勝てる気がしない。


 俺は怒りを抑えつつ、渋々月影を案内するのであった。




 案内を終え、部屋でゆっくりしていると月影が俺の部屋の扉を叩いてきた。


「翔、部屋の片付けが終わったから遊びにきたよ。」


 遊びに来んな。あと名前を略すな。


 俺は渋々部屋の扉を開けた。その時俺の中で危険信号が鳴った。


 しまった‼︎コイツに祭壇(マルスちゃんのアクスタ55体)を見られちまったら何を言われるかわかんねえ‼︎そう咄嗟に思ったが、既に遅かった。


「お邪魔します。ここが翔の部屋。ん?あれは?」


 マズい、コイツ絶対馬鹿にしてくるぞ。俺は知っている。この手の人種は他人の趣味を貶すタイプだ。そう、あの時のアイツらみたいに・・・


「すごい‼︎この数と飾り方・・・まるで美術館に飾られる展示品のようだ。翔、これは誰?」


 ・・・は?


 俺の予想とは裏腹に竜の反応は良好だった。


「だ、誰って、マルスちゃん。推しの声優だけど。」


「そうか・・・これが推し活と言うものか。最近ネットニュースでよく言葉は見るけど、身近にここまでする人はいなかったから新鮮だ。翔がこの人に賭ける熱量、伝わってくる。」


 月影は小馬鹿にするわけでも、無関心というわけでもなかった。


「・・・な、何で馬鹿にしない?」


 俺は静かにかつ恐る恐る聞いてみた。


「なんで?君の好きな人や物が自分とどう関係があるの?」


 月影は不思議そうにそう答えた。


 コイツ・・・アイツらとは違う。俺は月影を一瞬でも偏見の目で見てしまった自分自身を恥じた。相手の事をまだ何も知らないのに、昔こうだったからという理由だけで決めつけてしまった。罪悪感に駆られ俺は月影の顔を見ることができなかった。


「そうだお土産を持ってきたんだ。よかったら貰って。」


「お、おう。ありがとう。」


 そうだよな。最初の言動がアレだっただけで、根はいいヤツなんだ。こうやってお土産も持ってきてくれたんだから。


 激辛‼︎ジョロキアサイダー※悪用厳禁


「さあ遠慮なく飲んでくれ、この場で。まさか他人からのお土産を受け取って、飲まずに捨てるなんてことはしないだろう?」


 月影はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。


 やっぱり・・・やっぱりコイツ嫌い‼︎


 この激辛サイダーを飲み干したからか、一人変わった隣人が更に増えたからなのか、またしても頭痛に襲われる俺だった。


 次の日、俺は口内の痛みと腹痛で一日寝込む羽目になったのは言うまでもない。アイツ、絶対許さん。

第4話、ご覧いただきありがとうございました!!

かなり期間が空いてしまいましたが、執筆再開出来そうです。

今年の前半戦は新しい業務に慣れる事と、ライブ参加ラッシュであっという間だった気がします。

(それを言い訳にしてはどうなのか?ですが・・・)

マイナスな反省はここまでにして、自分のペースで書いていこうかなと思います。

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