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第3話「運命のあの子」

 夕食後、食堂で寛いでいる俺たちに宿直の男性教師が挨拶へ来た。見た目的に20代後半といった所だろう。全体的にふくよかで優しそうな顔をしている。


「初めまして。私は飛澤雄介(とびさわ ゆうすけ)。現代文と古典の担当教員だ。と、いっても今年度からこの高校に赴任したから君たちと同じ一年生になるのかな。これからよろしく。ところで君たち以外の2人は・・・?」


「花村です。よろしくお願いいたします。新之助は地元の方と食事に行っています。あと女子生徒が一人いますが、まだ会えていません。」


「そうか。一応寮のルールとして、門限の午後9時に点呼を取る事になっている。あと、今日から来ているメンバーに改めてこの寮の説明をするように教頭先生から指示があったから居てくれないと困るんだけどな・・・」


 飛澤先生は少し困った顔をした。そりゃまあ夜の9時で4人中2人しか居なかったらそうなるわな。


「せ、先生。大丈夫かと思います。一応事前に送られてきた資料には寮のルールとか書いてあったし・・・」


 俺が他2人をフォローすると花村も頷いた。すると凄い勢いで寮のドアを開ける者が。香鳥だ。


「ギリギリセーフ‼︎いや〜あのおっちゃん面白かったわ〜‼︎あれ?もしかしてセンセー?すみませんギリギリになってしまいました‼︎香鳥新之助です‼︎よろしく‼︎」


 すげえなコイツ。教師相手でもこのテンションかよ。俺は香鳥にドン引きするのであった。


「香鳥君、ギリギリセーフだが次からはもっと余裕を持って行動するように。」


「はーい‼︎あれ、そういえば今日はもう1人来てるって噂だったけどま〜だ来てない感じ?」


 いやどこからの情報だよ。コイツなんでもありか?


「すみません、遅くなりました。」


 女子寮のドアから一人女子生徒入ってきた。夕方の女の子だ。


「これで今日からのメンバーは揃ったみたいだね。改めてこの春からよろしく。じゃあ、寮のルールを説明していくから、みんなそこに座ってくれるかな。」


 そう言って飛澤先生が寮のルール説明を始めた。門限、使用上の注意、外泊届などいたって普通の寮って感じだ。所々に「部屋でアルトサックス禁止」、「オオクワガタの養殖・売買禁止」、「1日5回以上の入浴禁止」などの超限定的な規約がある。過去になんかあったのか?というくらい限定的すぎて吹き出しそうになるが、堪えつつ話は進んでいく。


「以上がこの寮のルールだ。何か質問はあるかな?」


 飛澤先生がそう言うと、香鳥が手を上げた。


「はい‼︎13ページに書いてあるやつなんですけど、本当に部屋に異性を呼んじゃダメですか⁉︎オレ、歳上彼女がいないとダメなタイプなんすけど‼︎」


 コイツ無敵かぁ?普通この場で聞く内容か?俺は若干頭を抱えた。


「無論、認められない。ちなみに連れ込んだ時点で強制退寮になるから気をつけなさい。」

「ちぇっ、歳上彼女を部屋に連れ込む夢が途絶えちまった。いや、逆に相手の家に行けば良いのか。」


 違う、そうじゃねえ。


「ははっ、残念だったね。新之助。」


 花村が爽やかな笑顔で微笑んだ。いや、そこはツッコんでくれよ。マジで。


「特になければ以上で終わりにするよ。そういえばみんな自己紹介は済ませたのかな?まだだったらこの場で自己紹介タイムにしよう。」


 うわぁマジか。あの女子生徒がいるこの場からとっとと去りたいんだけどなあ。そう思う矢先、例の女子生徒が自己紹介を始めた。


倉春幸希(くらはるゆき)です。静岡県東部から来ました。これからよろしくお願いいたします!」


 あれ?さっきと違ってめちゃくちゃ愛想が良いぞ?よく見れば可愛い系の顔立ちで、まるでアイドルみたいだ。ポニーテールも相まって正直タイプだ。もしかしてさっきのやり取りは幻覚だったのかな?


「花村政知です。よろしく。」


「俺、香鳥新之助。シクヨロ〜♪」


「か、風切翔太郎、です。」


「わあ、みんなよろしくね。」


 やっぱりめちゃくちゃ愛想良いぞ⁉︎この子⁉︎


「じゃあ、あとは自由時間にする。今日は移動で疲れたと思うからゆっくり休んでくれ。3日後が入学式だから、それまでに何か困ったことがあれば学校へ連絡するように。」


 そう言って飛澤先生は宿直室へ戻っていった。同時に、花村も香鳥もすぐに自分の部屋へ戻っていった。


「あ、あの。く、倉春さん‼︎」


 俺はさっきの件について謝罪するため、倉春さんに声をかけた。


「さっきはごめんなさい。流石に初日からあんなの見たらドン引きするよね・・・ハハハ。」


 バツが悪そうに言うと、倉春さんの顔から一瞬で笑顔が消えて、さっきのゴミを見るような目で俺に言い放った。


「・・・別に。」


 いや、さっきと全然態度が違う‼︎マジでなんなのこの子。え、二重人格?俺限定でコレ?そんなにキモかった⁉︎いやキモかったか。


「もう良いから。じゃあ。」


 そう言って倉春は女子寮へ帰っていった。


 倉春を横目に頭を抱えることになったその時、一瞬だけ倉春の後ろ姿に違和感を覚えた。


「ん・・・?なんだろう今の感じ。どこかで・・・」


 何故か知っているような、以前あの子とどこかで会ったような。


 まさかね。いくらこの物語がラブコメだからと言って、再会系ヒロインは安直すぎるな。・・・俺は誰に言ってんだ?


 そんな感覚を放って、俺も自室へ帰ることにした。


 数分後、香取が部屋に凸って来たせいで、花村も含めて夜食の会が始まった。


 頼む、今日はもう寝かしてくれ。

第3話読んでいただきありがとうございました。

ちなみに作者は高校時代寮生活をしていたのですが、「1日複数回の入浴禁止」のルールは実際にありました。

(流石に明文化はされてはいませんでしたが・・・)

なんでも「風呂部」を名乗った人たちが1日3回風呂に入った事が原因だったそうです。

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