第2話「太陽みたいに輝くヤツら」
俺はなんとか坂道を登り切り、これから住む青空寮に着いた。
どうやらこの寮は今年から開設されたらしく、俺を含めた5名の新入生が試験的に住む事となっている。それまでの島外出身者は学校が手配した島内の民宿や島民の家に下宿しているそうだ。どちらにせよ他人に気を遣うので俺としてはどうでもいい。
とりあえず寮のドアを開けてみると、恐らく新入生であろう男子生徒がいた。新入生にしてはどこか貫禄がある。身長はおそらく175㎝は超え、ガタイが良く、野球漫画で言うキャッチャーポジションのキャラクターを彷彿とさせる。
「あのう・・・もしかして新入生ですか?」
俺は緊張気味に声をかけてみた。
「ん?もしかしてキミも新入生?俺は花村政知。これからよろしく。」
「あ、えっと、か、風切翔太郎です。東京から来ました。」
「ははっ、そんなに緊張しなくて良いよ、同い年だからね。ちなみに俺は千葉出身。あ、お土産持ってきたから後で一緒に食べよう。」
とりあえず、良い人そうだ、良かった。
そう安心したのも束の間。寮のドアを勢いよく開けて1人の男性生徒が入ってきた。
「こんちわーす‼︎香鳥新之助で〜す‼︎今日からお世話になりま〜す‼︎ふっふ〜‼︎」
うわっ、なんかうるさそうなのが来た。俺と海は驚いて彼の方向を見た。顔立ちもスタイルも良い茶髪パーマの青年。服装はいかにも”オシャレ”と言う感じ。マジか、こいつも同居人かよ。
「ん⁉︎もしかして同級生⁉︎今日からシクヨロちゃん‼︎新之助です‼︎新ちゃんって呼んでちょ〜。」
「ふふっ、花村政知だ。よろしく。」
「か、風切翔太郎です。」
「おお〜‼︎さとちゃんにショータロー‼︎これからよろしく‼︎」
ハイテンションな彼はそう言って力強く握手をしてきた。俺、コイツと仲良くできるかな・・・?
「良いね〜この島‼︎海の色は綺麗だし、風は気持ちいし。なんたって良い人が多そうだ。さっきも見ず知らずのおっちゃんと仲良くなってさ〜。トラックでここまで送ってくれてマジ助かったわ〜。あ、今日夜いないんでよろしく‼︎おっちゃんが晩飯連れってってくれるみたいだから行ってくるわ‼︎」
俺は唖然とした。見ず知らずの人に送ってもらった?夜飯に食いに行く?コイツ、正気か?俺は恐る恐る彼に聞いてみた。
「え、それ大丈夫?誘拐とかされない?」
「大丈夫〜‼︎だってこの島、みんな顔見知りで変な人はいないって。もしなんかあったとしても俺だから大丈夫‼︎」
彼はそう言って自信満々にサムズアップをした。確かにコイツなら誘拐はおろか強盗や詐欺にあっても大丈夫そうだ。
「そういえばあと2人来るって話だよね。まだ来てないみたいだけど、どんな子だろうね。」
「俺ちゃんは可愛い年上のお姉さんがいいな〜」
香取が言うには寮は右側が男子寮、左側が女子寮、中央の食堂で分断されていて日替わりで教師が宿直に来るそうだ。さっき来る前に港にいた教員から聞いたらしい。いやだからなんでそう簡単に他人へ声をかけられるんだよ。
そんなやり取りを終え、俺たちは一旦それぞれの部屋で荷物の整理をすることにした。
この島は昼と夕方に本州からのフェリーが着く。おそらく後の2人は夕方の便か明日に来るのだろう。
荷物の整理をしていると気づけば当たりは暗くなっていた。
大方のものは片付いた。ポスター、タペストリーその他諸々家から持ってきたグッズは飾り終えた。おっと、まだ肝心な祭壇(マルスちゃんのアクスタ55個)が飾れてないな。ふひゅ、やっぱりマルスちゃんは可愛いなあ・・・でも、これから簡単にはイベントにも行けなくなるんだよな。
「ごめんね、マルスちゃん。これから3年間、会いにいけなくなるんだ・・・去年のサイン会で「一生推します‼︎全イベント参加します‼︎約束です‼︎」って言ったのが嘘になっちゃうなあ。え?それでも許してくれる?マルスちゃんは優しいなぁ。」
みなさんご覧ください。これが推しのアクスタに話しかける異常独身男子学生です。誰も見てねーからいいんだよ。そう誰も・・・あれ、なんかドアの方から風が入ってきてない?すげースースーするんだが。
そう思って目を向けると、ドアが開いていた。そしてなぜか女の子が立っていた。
「あ、すみません。えっと・・・ここ女子寮じゃないっぽいですね。間違えて入った上に開けてしまいました。えっと・・・ナニモミテイマセン。・・・あっ、アニメのアクスタかな?大丈夫‼︎私、理解ある方だから‼︎知り合いもそういうタイプだから‼︎」
ああ、冬がくれた予感ってこういうことだろうな。スッゲー寒い、特に心が。
俺はドン引きする彼女の誤解を解くために必死になって弁解した。
「こ、これは‼︎大人気アニメのアイドル☆ライブのキャストのアクリルスタンドで拙者の推しの乙女坂マルスちゃんで候‼︎去年のサイン会で約束したことを守れずに悔いていただけで、そういう趣味はないですのだ。マルスちゃんは俺の希望、恩人、憧れでいつか恩返しがしたいと思っているでござるよ(超早口)」
俺が弁解すると彼女はマルスちゃんを見るや否や、なぜか彼女の顔つきが苦笑いから険しい顔になった。
「うわぁ。・・・マジで無いわ。」
彼女はゴミをみるような目でボソッと吐き捨て、部屋を後にした。
【悲報】俺の高校生活、無事終了のお知らせ。
俺は未だかつて経験したことの無いショックで崩れ落ちた。
「翔太郎いるかい?今日の夕飯のことだけれど・・・うぉ⁉︎どうしたなにがあったんだい⁉︎」
花村が崩れ落ちている俺を見て仰天した。
俺は事の経緯を説明した。
「なるほど、そんなことがあったんだね。まあ確かに個性的ではあるかもしれないが、いい趣味じゃないか。アイ☆ラブは確か今人気急上昇中のアニメだよね。」
おお‼︎もしかして花村は解る感じか⁉︎良かったぁ。理解してくれそうな人が身近にいて安心したのと同時に、彼女に対する怒りが少し込み上げてきた。
「でも、あの女の子。あんな露骨に嫌な態度取らなくてもいいのに。」
「ははっ。世の中には色々な人がいるさ。好きな人もいれば嫌悪感を示す人もいる。キミだって何かしら苦手なものはあるだろう?」
花村はそう言って優しく諭してくれた。やっぱり同級生とは思えないな。
「さあ、夕飯にしよう。どうやら春休みの期間、寮母さんは不在。自分達で食事を用意しないといけないらしい。冷蔵庫の食材は使って良いみたいだから、今日は俺が作ろう。」
「マジで⁉︎料理できんのか⁉︎すげえな‼︎」
「簡単なものだけどね。食べられないものは無いかい?」
「無い無い‼︎なんでも食える‼︎」
「じゃあ、ひき肉が大量にあったからハンバーグにしようかな」
そう言って花村は食堂のキッチンに向かった。
「香取といい花村といい、なんであんなハイスペックなんだよ。本当に高校生か?なんかキラキラしてるし、俺とは大違いだな。」
同級生のスペックの高さに、俺は劣等感を感じた。
その後、30分も経たずして三ツ星レストラン級のハンバーグが出てきた事にまた驚く俺であった。
第2話、読んでいただきありがとうございました‼︎
面倒見が良さそうな爽やか青年の花村、ハイテンションでコミュ力高そうな香取、そしてなぜか険しい顔をした女の子。この3人と翔太郎は今後どう関わっていくのか?
ちなみにですが、サブタイトルには時々ある法則を入れる予定です。もしわかったらぜひコメントしてくださいね〜




