第九話 ローランド王子は訣別した
「ならぬ!」
王城の広間。厳しい口調で叫んだのは、ローランド王子の父親であるカルバドス国王ケイオス十三世。父親に咎められたローランド王子は、顔面蒼白となった。
「な、なぜですか父上! 僕はただ、行方不明の婚約者を探したいだけなのです」
「お前は側近の者に捜索隊を編成させ、実行させているそうではないか」
「は⋯はい」
「お前自身が行く必要はない。そもそも捜索隊を我が許可もなしに動かすこと自体が、私の意思に反している」
「しかし⋯」
ローランド王子は不服の顔をしていたが、ケイオス十三世はさらに畳みかけた。
「百歩譲って、勝手に我が配下を動かしたことは許そう。だが、お前自身が行くことはならぬ。その身がもし悪党どもの誘拐にでも遭えば、国家の一大事だということがわからんのか」
言われてローランド王子は、ぐっと息を詰めた。
「軽率だぞ、ローランド」
ケイオス十三世はそう言って、話を終わらせようとした。しかし、ローランド王子は食い下がった。
「ぼ⋯僕はそれでも愛するレイアを探したい! 今どこで、それこそ悪党どもに捕らわれているかもしれないのです!」
「それがどうした」
ケイオス十三世の表情は冷たかった。
「単なる貴族の娘ひとり、どうなろうが知ったことではない」
「そんな! 彼女は僕の婚約者だ!」
「縁組などいくらでもできる。忘れろ」
「⋯⋯!」
呆然としたローランド王子に、ケイオス十三世は冷酷に言い放った。
「お前を二週間の謹慎処分にする」
「二週間?! そんな⋯⋯」
「軽率にも、この私に楯突いたことを後悔するがいい。くれぐれも行動は慎め、愚か者め」
ケイオス十三世は俯いた息子を残して、その場を去った。ローランドはギリッと歯を食いしばる。
(父上には僕の気持ちがわからないんだ⋯母上を愛していないから)
やがてローランドは顔を上げ、ひとつの決心をその眼に宿して自室へ戻った。
(僕はここを出る。謹慎など、冗談じゃない⋯⋯!)




