第五十四話 ローランド王子は気を失った
「だいたい、なぜユーリはこんな前後不覚で言葉を失っている? 彼は僕の側近だぞ」
「あっ、そ、それはですねえ…」
フレイラはしどろもどろになっていた。やはり何かを隠している。
「何か知られては都合の悪いことでもあるのか? きみたちは見たところ魔導士のようだが、何か彼に」
「あわわわ!」
慌てふためいたフレイラは、自ら失態を露呈している。
「貴様、何を隠している? いま言えば許してやるから言え」
ローランド王子はフレイラに詰め寄った。その細い左手首を握って間近に彼女の顔を見た瞬間、何か心のなかで雷が落ちたような衝撃があった。
「レ…レイ…ア…?」
その名前を思い出した途端、激しい頭痛がした。思わず呻き、その場にうずくまると、後頭部を何かで殴られた。
気を失う前、声が聴こえた。
「まさかあたしの魔法を破るとは、ものすごい執着」
(魔法だと…?)
そしてがくりと気を失ったローランド王子のまわりに女たちが集まり、彼を見下ろした。
「あーあ、また殴ってどうすんだよ。こいつの頭ボコボコじゃねえか」
ミレイがぼやいた。
「ど、どうしましょう…」
フレイラは泣きそうになっている。
「どうするつもりだったんだ?」
ミレイがサーヤに尋ねると、サーヤは不敵に笑った。
「いや、特に不都合は無いかな、このままカルバドスの王城まで運んでしまえば」
「え…本当に…?」
不安げなフレイラの頭を、サーヤはポンポンと軽く撫でた。
「まあ、あたしに任せときなよ」




