第五十三話 ローランド王子は訝しんだ
フレイラと呼ばれた少女は、さらに続けた。
「かいつまんで申し上げます。私たちは『黄金の林檎』という冒険者パーティーのメンバーで、盗賊団『鷹の羽』に誘拐された貴方がたの身柄を、偶然か重なって、たまたま救出することになったのです。これから、王子様がたの御身をカルバドス王国の宮殿へお送り申し上げます」
フレイラは少し緊張しているようで、表情がそわそわしていた。何か隠していることがあるようだと、ローランドは思った。
「どんな偶然が重なってそうなったのかわからないが、あなたの名前は?」
「フレイラと申します。こちらがリーダーのサーヤです」
「僕のことを知っているのか?」
「は、はい…カルバドスの出身ですので」
「僕は、誘拐だとは認識していない」
フレイラは押し黙った。
「誰かを探していたような気がするのだ。でも、いつ、どのようにして城を離れたのか、憶えていない。記憶が曖昧になっている」
女たちは黙っていた。
「まるで、一度死んで生き返ったかのように感じる」
緊張が走った。誰も何も言わないが、その表情には、明らかに狼狽がみてとれた。
ローランドは、今自分が言ったことに自覚はなかったが、女たちになんらかの事情があって隠し事をしているのだということはわかった。
「ちなみに訊くが、ここはどこだ?」
「現在は、シーエンド皇国とカルバドス王国の境に位置するラハスの森の街道近くにおります」
フレイラではなく、サーヤと呼ばれた緑の髪のエルフが答えた。見た目は十四歳ほどの少女に見えるが、その様子は老獪さを感じさせ、高齢のエルフ独特の風格を具えている。ローランドは、かつて国外遊行の際にこういうエルフの顔を見たことがあった。
「サーヤと言ったか」
「はい」
「あなたは、セシアという女性をご存じか」
サーヤは、ピクリとも動揺せずに答えた。
「それは、私の母です」
ローランドは敢えてエルフと言わなかったが、女性と言っただけで通じたことで、自分の思念が読み取られていることに気づいた。
「僕がただひとり見たことのあるエルフだったが、そうか、セシア殿はあなたの母君であったか」
「セシア…?」
灰色の髪をした、男の子か女の子かわからない、十歳にもなっていないであろう子どもがつぶやいた。ローランドはそれを見咎めた。
「先ほど、あなた方は冒険者パーティーだと言われていたが、そのような幼い子を連れているのはなぜだ?」
「この子は、パーティーのメンバーです」
「メンバー?」
ローランドは訝しく思った。もしかしたら、子どものように見えるだけで、その子もエルフの類で年齢はもっと上なのかもしれない。




