第四十六話 ローランド王子はダンジョンにいた
一方その頃ローランド王子とその側近ユーリは、深いダンジョンを彷徨っていた。
「まさか地下牢が迷宮と繋がっていたとはな」
拾った剣で戦いながら、ローランド王子はつぶやいた。ユーリも王子とともに魔物と応戦しているが、ローランドが無傷なのに対し、若干の手傷を負っている。
「王子、引き返しましょう。ここは危険です」
ユーリが言うと、ローランド王子は振り向きもせず、後ろから襲ってきた魔物を軽々となぎ倒しながら、言った。
「元いた場所に戻る道がお前にわかるのか? ここは魔法の気配が満ち満ちている。敵は僕たちを惑わせて道を失わせる気だ。この最深部に、行くべき場所がある」
「王子、これ以上進むと、もっと手強いモンスターが⋯」
「わかっている。この扉の先が、おそらくモンスターどものボスがいるところだ。こいつを見逃すわけにはいかない」
「なぜですか?」
「迷宮というのは、最も強い魔物を倒したとき、外への扉が開かれるのだ」
このときユーリは、ローランド王子を本気で尊敬しかかった。
「わかりました⋯拾い物ですが、先ほど開けた宝箱に入っていたポーションを試してみます。いちかばちか」
ユーリは、小綺麗な瓶の蓋を開け、中に入っていた青い液体を少し飲んでみた。すると、傷口が光に包まれ、傷が治癒した。体力と精神力も戻ってきたようだ。
「間違いない、これはポーション⋯。王子、扉を開きましょう」
ローランド王子とユーリは、ゴロゴロと音を鳴らして、重い石の扉を開いた。中にいたのは、巨大な赤いドラゴンだった。
ユーリはすぐさま逃げ隠れたが、ローランド王子は剣を提げて、堂々とドラゴンの前に立った。
「意志ある竜よ、きみに尋ねる。僕はカルバドスの第一王子ローランド。きみが、この迷宮で最も強い力を持っていると推察するが、僕はおそらくきみを凌駕する剣技を身につけている。降参してくれないだろうか」
返事のかわりに、ドラゴンはゴオッと炎の塊を吐いた。ローランド王子はやすやすとそれをよけ、なお、独り言をつぶやいた。
「駄目か、では戦うしかないな」
赤いドラゴンは巨大な翼をはためかせて高い洞窟の中空に浮き、ローランド王子を踏み潰しにかかった。それをよけた王子に、噛みつこうと牙を剥き出しにして襲いかかる。それもよけたが、竜は長い炎を吐いた。端に追い詰められて、今度は逃げ場所がない。思わずユーリは叫んだ。
「王子!!」
竜の炎は辺り一面を埋め尽くし、ユーリは目を覆った。




