第四十一話 フレイラは蘇生魔法を使った
そのとき馬上から見て、藪の中にきらめく何かの光が、フレイラには見えた。
「ルティシアさん、馬を止めて! あそこに何かある」
ルティシアは馬の手綱を引いて、足を止めさせた。
「どこだ? 私には見えなかったが」
「あそこです、あの藪の中」
フレイラは身軽にさっと馬を降り、何かに導かれるように、藪の中へ入っていった。
一行があとに続いてそこへ足を踏み入れると、大木の根元に腐りかけた子どもの死体があった。
「なんでこんなところに子どもの死体が⋯⋯」
「病気で亡くなった可能性もあるな。おい!」
フレイラは鼻や口を塞ぐこともせず、無造作に手を伸ばした。子どもの死体は、首に大きなタリスマンを提げ、なんらかの魔法書を抱えていた。フレイラはその魔法書をそっと手にとると、中のページを開いた。
(死者を蘇らせる魔法⋯? これ、禁書だわ!)
フレイラが魔法書の文字に目を走らせていると、サーヤがそれを覗き込んだ。
「どうするの、フレイラ」
フレイラはしばらくじっと考え込んでから、答えた。
「この子を、蘇生してみます」
「え?!」
アルテミシアは驚いて声を上げた。
「いいの? サーヤ」
「やってみたらいい」
サーヤは表情も変えずにのんびりと言った。フレイラは死体の上に置いた魔法書に手を置き、イメージを整えながら、念じ始めた。
(女神様⋯⋯もしも私が、本当に聖女の器なら、この願いをお聞き届けください⋯⋯どうか⋯⋯!)
すると、フレイラのまわりから光の粒が現れ、死体のほうへ集中していった。やがて、腐っていた体の組織がだんだんと修復され、子どもの姿は生きている状態となんら変わらなくなった。
サーヤたちはその様子をじっと見守っていた。誰も何も言わなかった。
そして、その子どもは目を開いた。瞳の色は、髪と同じ灰色だった。少女はまばたきし、起き上がり、フレイラを見た。
(蘇生魔法⋯私にも使えた!)
その瞬間、子どもの膝の上にあった禁書の魔法書は、ボッと音を立てて崩れ去り、あっという間に散って無くなってしまった。
(消えた⋯⋯?)
一度使うと秘密を守るために自らを壊す魔法がかけられていたのだと、フレイラは理解した。




