第四十話 フレイラたちはリルム村に着いた
荷物の準備を終えたフレイラたちは、早速移動を始めた。外にはルティシアの白馬ホワイトリリー号が繋いであった。フレイラは、そのリリー号にルティシアと一緒に乗ることになった。「仮にも聖女の器に、徒歩で移動させるわけにはいかない」というルティシアの強い意見によってである。
王子とのデートで時々こういうシチュエーションがあったな、とフレイラは思い出した。自分を探しに国境まで来たローランド王子が囚われの身になったのは自分のせいだと思うと、キュッと胸が痛んだ。
「気分が悪い? 大丈夫ですか?」
ルティシアは、フレイラが聖女の器だとわかってから、彼女への気遣いが細やかになってきた。フレイラにとっては、ありがたいけれど気が引ける。本当に自分が聖女の器なのかどうか、確信が持てないからだ。
「だ、大丈夫、です」
見上げると、近いところにあるルティシアの凛々しいその顔は繊細で美しい。女の目から見ても中性的なその美に、くらくらしてしまいそうだ。一瞬、本当は自分は女性が好きなんだろうか、とフレイラは思って、頬を赤らめた。
(そんなつもりはないけれど、でも、なんか恥ずかしい⋯)
サーヤは後ろを歩きながら、つまらなさそうな目でルティシアとフレイラの二人を見ていた。
「師匠が徒歩なのに、弟子が馬とは」
アルテミシアが窘めた。
「しょうがないでしょ。聖女の器ってこと以前に、今のフレイラちゃんにはそれほど体力がないんだから」
「ちぇっ」
「それに、もうリルム村に着くわよ」
森の前方が開けて、坂道の下にあるリルム村の全貌が見えた。それは美しい光景だった。赤い屋根が続き、水車と風車があちこちにあり、村の中心には教会と時計塔がある。そして、広いぶどう畑が段々になって、実をつけていた。
「こんな時期にぶどうが実ってる」
「栽培に魔法を使ってるみたいね」
「珍しい魔法だ」
一行は村の中へ入っていった。




