第三十七話 フレイラは髪と瞳の色を変えた
その夜フレイラたちはミレイの隠れ家に泊まり、冒険者として大金を稼いだらそのあとどんなことをしたいか、はしゃぎながら話し合った。それはフレイラにとって夢のような時間で、フレイラは思った。
(そうそう、この感じ! 仲間がいて、みんなで笑いあって、やりたいことを話し合う⋯最高!)
そんなフレイラをアルテミシアは微笑みながら見守っていた。
サーヤとミレイはことあるごとに勝負を始め、それはアルテミシアとルティシアの窘めによって、おおかたジャンケンに変えられた。ミレイは自分がリーダーでないことを今まで経験したことがないらしく、いちいちサーヤにつっかかる。
深夜になるとスコールのような大雨が降り、ミレイは裸になって水浴びをした。
「アタシはいつもこうしてんだ。気持ちいいよ。どうせここには精霊たちの魔力で、アタシが許可した奴以外誰も来られないから、みんな裸になっちゃいなよ」
サーヤとアルテミシアは嬉しそうに服を脱ぎ始めた。ルティシアとフレイラは戸惑いながら。特にフレイラは、マスクをしていないことを気にしながら雨に打たれた。全裸で雨を浴びるのは、確かに気持ちよかったが、寒かった。家の中に戻ると、タオルでお互いの頭を拭きあった。家出をして以来初めてフレイラは声を出して笑い、無邪気な楽しい時間を過ごした。
ミレイもサーヤもアルテミシアも、エルフというのは自分の認めた人間に対しての肩入れが強い、とフレイラは感じた。なんというか、家族のように接してくれる。それがフレイラには嬉しかった。
「フレイラちゃん、これ読んで」
寝間着に着替えたフレイラに、アルテミシアは一枚の巻物を手渡した。
「これは、魔法書ですね。えっと⋯⋯」
はっ、とフレイラは息を呑んだ。
「瞳の色と髪の色を変える魔法?!」
「そう、もう仮面をつけないほうが、自由に行動できると思って」
「あ⋯⋯ありがとうございます!!」
フレイラは慎重に魔法書を読み、何度か頷いた。そして、目を閉じて自分にその魔法をかけてみた。
「どう、ですか⋯?」
返事のかわりにアルテミシアは手鏡を見せた。そこには、茶色の髪に茶色の瞳をした、フレイラ自身が映っていた。
「もうその魔法、完全にマスターしたみたいね」
「はい! 本当にありがとうございます! 嬉しいです」
フレイラは不意にアルテミシアに抱きしめられた。
「あ、アルテミシア⋯さん⋯⋯?」
「もうね、私、あなたが可愛くて。あなたは私の妹分よ。寿命は全然違うけど、大事に育てるつもり。私にできることはなんでもしてあげたいって思ってるの」
フレイラは胸がじわりと温かくなるのを感じた。
「もう、十分すぎるほど助けていただいてます⋯私もサーヤ様とアルテミシアさんと、ずっと、一緒にいたいです。そして、いつか甘いものたっぷり食べて、お茶会しましょう」
「異世界のアフタヌーンティーっていうやつね。楽しみだわ」
世話好きのアルテミシアのことが、フレイラはすっかり大好きになっていた。その夜二人は隣同士で、指をつなぎながら眠った。




