第三十五話 ミレイは情報を語った
ミレイの隠れ家は、迷いの森の中心の広場にぽつんとあった。空から眺めても、それはただの大きな樹にしか見えない。樹の枝に板を取り付けて、いくつもの段差のある部屋を作ってあるのだ。
「わあ、すごい! 樹上の家なんて、素敵!」
「だろ」
フレイラが無邪気に喜ぶと、ミレイは得意げに鼻を鳴らした。
梯子を登って部屋に入ると、それはもう快適な生活空間だった。キッチンもあり、寝床もあり、採光窓まである。サーヤはくつろぎ用に敷いてある絨毯の、見事な細工を感心した目で眺めていた。
「これはサリカイ国の女たちが作るっていう手織り絨毯か⋯贅沢な趣味してるな」
「盗賊団をぶん殴ったらくれた」
「それは強奪したって言うのでは⋯⋯」
アルテミシアのツッコミはミレイの耳には届かないようだ。ルティシアが口を開いた。
「で、先程の件だが、ミレイ殿がご存じのことを、教えていただきたい」
「ミレイでいいよ。殿なんてつけられても堅苦しい」
「わかった。それではミレイ、貴女のご存じのこととは⋯⋯」
「三つある」
ミレイは指を三本立てて見せた。
「一つ、聖法皇リンデンブルクは今、偽物だという話はけっこう広まっている」
ルティシアはがっくりと首をうなだれた。
「やはりか⋯⋯だが、仕方あるまい」
「二つ。カルバドスの王位継承者ローランド王子を誘拐したのは、アルバトロスの盗賊団『鷹の羽』」
フレイラは、ハッと目をみはった。
「レイア・ティアブレイド公爵令嬢を賞金首に仕立てた奴はわからないが、たぶんカルバドス王家のあたりの誰かだ。この問題には、いろいろややこしいところがある」
ミレイは淡々とした調子で続けた。
「たとえばカルバドス王家の王位継承権とかな。フレイラ、あんたには心当たりはないのかい?」
「いえ、私にはそのようなことは⋯⋯」
フレイラは首を横に振った。
「でも、ローランド王子が生きていて、盗賊団に捕らえられているなら、助けなくちゃいけない気がします」
「王子はあんたを探しに国境ら辺まで来てたらしいよ」
どきっとした。フレイラはその胸の反応が、自分に責任があるゆえの不安なのか、王子の身を案じてのことなのか、わからなかった。
「あと一つ、三つ目の情報があるんだけどね。聞くかい?」
ミレイが尋ねると、皆シンと静まって次の言葉を待った。




