第三十四話 ミレイは仲間になった
「その疑問には私が答えるわ」
と、アルテミシアが言った。
「この子は本を読んだだけで、詠唱なしで魔法を習得し、自力で、モンスターも倒さずに、レベル40になった。普通の人間には出来ない。彼女には特別な魔法の才がある」
「それにねー」
それまで沈黙を続けていたサーヤが口を開いた。
「彼女のまわりにはいつも聖霊の加護を感じるよ。聖女の器だとはわかってた」
「なぜ私は気づかなかったのか⋯せめて教えてくれれば⋯⋯」
ルティシアが兜をとって頭を掻いた。
「まあ、そのうち教えようかとは思ってたんだけど」
サーヤは面白そうな顔をしてルティシアを見ている。聖騎士は聖女と法皇を守るために存在しているので、ルティシアの煩悶は当然と言える。
サーヤは続けて、
「でもさ、関係ないじゃん? フレイラはフレイラで。私の弟子でパーティーメンバー。それで十分じゃない? みんなで冒険してお金いっぱい稼いで、そのお金でやりたいことやって隠遁生活するって、楽しそうじゃない」
レイアはその夢をサーヤが支持してくれたことが、ものすごく嬉しくて、思わず涙をこぼした。
「サーヤ様⋯⋯ありがとうございます! 私は聖女にはなりません! みんなで美味しいお菓子をいっぱい食べて優雅にティータイムを楽しみましょう!! 私は、ただのフレイラです!!」
アルテミシアは微笑んで、仮面をはずしたままのフレイラの額に小さくキスをし、仮面をつけてやった。
「それでいいのよ、フレイラちゃん。これからもよろしくね」
「あーあ」
ミレイは腕組みをして溜め息をついた。
「あたしが守ってやるよ、フレイラ⋯だっけ?」
「えっ」
フレイラは突然の提案に驚いた。
「どうして、ですか⋯?」
「危なっかしいからだよ。あんたが賞金首になったせいで、シーエンド国では『喪われた宝石』だってことを知られて、いろんな奴があんたの身を狙っている。賞金狙いの奴ら、女神の神官、あんたを利用したい奴ら。誰にも心を許すなよ。ちょっとボーッとしたとこあるしさ、弱そうだし」
(うっ⋯)
ミレイの的確な指摘に、フレイラは内心ダメージを受けた。アルテミシアが手を叩いた。
「ミレイ、私たちのパーティーに入ってくれるのね! ありがとう!!」
「⋯⋯まあ、行きがかり上、仕方ねえかな」
「良かった! ねえ、サーヤ?」
「⋯⋯ミレイ」
サーヤはじろっと胡乱なものを見る目でミレイを見た。
「⋯あたしのことは、憶えてる?」
ミレイは首を傾げた。
「やっぱり」
サーヤはちょっといじけて小さくうずくまった。
「ま、いいじゃない、当初の目的は偶然果たせたんだし」
「アルテミシア、こうなること予想済みだった?」
「ウフフ⋯内緒」
「悔しい」
ルティシアがミレイに握手を求めた。
「ミレイ殿。パーティーメンバーへの参加、歓迎する。私はパラディンのルティシア。今は、わけあって都から消えた法皇閣下を探している。貴女はそのことについては何かご存じではないだろうか?」
「噂は聞いてるよ。あくまでも噂だけどね」
「そうか! どんな些細なことでもいい、ぜひ教えてほしい」
「場所を変えよう。あたしの小屋においで」
フレイラたちはミレイにつき従って、ミレイの隠れ家に向かうことになった。




