第三十一話 フレイラたちは謎の三人組に遭遇した
日が暮れて、一行はサーヤがマジックバッグから出したテントで野外泊することになった。『迷いの森』まではもう少し距離がある。
フレイラが拾ってきた薪に火をつけて、四人で暖をとった。アルテミシアは無造作に、昼間倒したグレイファングの皮をナイフで剥ぎ、なめして毛皮を作った。そして、グレイファングの牙も全部器用にえぐりとって鏃にした。
「使えるものはなんでも使う主義なのよ」
グレイファングの肉を焼きながらアルテミシアが言った。繊細で美しい顔に似合わず、豪胆である。
焼けた肉は、サーヤは食べない。アルテミシアも小食なので少ししか食べない。フレイラは、食べつけないので恐る恐る口にした。肉は意外にも美味であった。ルティシアは、上流階級の出らしく上品に食べた。だがこういう食事にも慣れている様子だった。
不意に、サーヤがフレイラに話しかけた。
「今日使った魔法を覚えても、本当に危機が迫るまでは、なるべく使わないように」
「……はい、サーヤ様。でも、なぜですか?」
「フレイラの心が汚れないように。殺すことに向いていない」
「……」
確かに、言われてみれば、貴族の令嬢として育ってきた自分も、前世で日本人女性として育った自分も、殺すという行為はしたことがない。でも、「心が汚れないように」とは、どういうことだろう?
フレイラが考えていると、アルテミシアが小声で言った。
「あなたには、たぶん、あなたにしか使えない魔法がある。その魔法を使う資格を損なわないためよ」
「私にしか使えない魔法……?」
「たぶんね」
そのとき、闇の中に小さな赤い光が瞬いた。ルティシアが立ち上がり、防御魔法の詠唱をした。パーティ全体が光のバリアに包まれた。
フレイラには、それが聖属性の魔法であることがわかった。聖騎士であるルティシアには、聖属性の魔法が使えるのである。そのとき、フレイラは自分が無意識的に鑑定眼のスキルを使っていることに気づいた。ルティシアが使っていた魔法が、もう理解できているが、半ば無意識的にも学んでいたのだ。
闇の中から、ケープを目深に被った三人の人物が現れた。攻撃魔法を何種類か撃ってきたが、ルティシアのバリアがすべて弾き返した。
「……驚いたな」
真ん中の人物が言った。男の声だった。
「おまえ、パラディンか? こんなところで何をしている」
「今のわたしは冒険者でな。こうしてパーティを組んでクエストを履行中だ」
「ハッ、冗談だろ」
男は光のバリアに手を触れ、ぐぐ…と破ろうとした。だが、ルティシアのバリアはびくともしなかった。
「ふん。ここで力を削がれるのも面倒だ。今日のところは見逃してやる。去ね」
「それはこっちのセリフだ。お前たち、何者だ?」
「答える義理はない」
ケープを被った謎の男たちは、すうっと姿を消した。サーヤが声音を抑えながら言った。
「ルティシア、油断するな」
「わかっている」
ルティシアは呪文を詠唱し、光のバリアを後方にも張った。その壁に何か武具のようなものが当たり、ぼろっと崩れ去った。
「闇属性の魔法だ」
ルティシアが言った。フレイラは一部始終を見ていた。そして、初めて闇属性の魔法の発動をその眼で視たのだった。




