第三話 レイアは両親と話した
屋敷でなんの疑いもなく娘の帰りを待っていたレイアの母マイアは、裸足でドレスもボロボロになって帰ってきた娘レイアの様子を見て驚愕した。
「まあ、レイア! なんてことなの? 盗賊に襲われたの?!」
レイアの表情は暗澹としていた。
「いいえ、お母様⋯誰にも襲われていませんわ、今はね」
彼女の言葉の真意は、母マイアにははかりかねた。
「あなた、ちょっと! ちょっと来て!」
「どうした」
焦燥に駆られたマイアの声に、何事かと飛んできたレイアの父ブルックスは、娘の姿を見て「あっ」と声をあげた。
「畜生、誰にやられたんだ? 俺が成敗してやる!」
壁に掛けられた剣に手を伸ばした父を、レイアは冷静に制した。
「誰にも何もされておりませんわ、お父様。私はただ宮殿から走って帰ってきただけなのです」
「? どういうことなんだ、レイア⋯」
レイアはスッとスカートを持ち上げて両親に礼をした。
「お父様、お母様⋯⋯私をこれまで王子の婚約者に相応しいようにと心を砕いて育ててくださったこと、お礼申し上げます。ですが、今夜、私は、ローランド殿下に、殿下との婚約を破棄するとお伝えしました」
「ええっ?!」
「理由については委細申し上げられません。どうか、お許しください」
レイアの様子は落ち着いていたが、両親は慌てふためいた。
「そんな、どうして急に⋯⋯」
「いったい何があったのだ? 理由を言いなさい、理由を」
「⋯⋯」
沈鬱な面持ちで、レイアは黙っていた。その様子を見て、父ブルックスはふつふつと怒りを滾らせた。
「そうか、わかったぞ! ローランド王子が他の女に心を移したのだな! あのクソ王子め、俺が成敗してやる!」
「違います」
再び剣を取ろうとした父親を、レイアがまた制した。
「違うのか。では、お前に狼藉を働いた輩が。俺が成敗」
「それも違います、お父様。私は私の意志で、婚約を破棄すると申し上げたのです」
「だから、何故⋯」
「実は⋯⋯」




