第二十九話 フレイラは杖を手にした
「まあ、その……なんていうか、ファッション……ですかね」
「そうか、まあ服装というものの好みは人それぞれだからな」
フレイラはホッとした。ルティシアは、案外鷹揚な性格のようだ。
「それで、あなたがたはどういう関係なのだ?」
その質問に対しては、アルテミシアが答えた。
「前も言ったけど、サーヤが私の姉で、フレイラちゃんはサーヤの弟子よ」
「なるほど」
ルティシアはまだ何か考えている様子だ。
「フレイラの魔法レベルはどのくらいなのか?」
「40です」
「ランクは?」
「Cクラス第1ランクです」
フレイラは正直に答えた。
「ふむ……」
ルティシアは立ち止まって革袋から何か小さなものを取り出し、フレイラに手渡した。見ると、それは繊細な文字が刻み込まれた指輪だった。
「この指輪を身につけておくと、いいかもしれない」
「これは……?」
アルテミシアが横から覗き込んだ。
「わあ、補助魔道具ね! レベルアップしやすい」
「え、いいんですか?」
フレイラが戸惑っていると、ルティシアは優しく微笑んだ。
「使ってもらいたい。わたしにはもう必要のないものだからな」
「ありがとうございます!」
フレイラが指輪に指を通してみると、指輪のサイズがキュッと縮まって指にぴったりとはまった。魔法効果のようなものは何も感じなかったが、早くレベルアップできるなら嬉しい。さらにルティシアが付け加えた。
「これから向かう『迷いの森』には、モンスターが出現する。そんなに強力なものはいないが、気をつけて、あなたには回復に専念してもらいたい」
「賛成」
サーヤが手を挙げた。
「回復を専門に魔法を習得して、戦うのはあたしたちに任せて」
「はい!」
フレイラは期待と希望に胸をふくらませた。
「あたしからもひとつ」
サーヤが転送魔法で、古ぼけた木製の杖を中空に浮かばせた。
「これ、使う魔法の効果を強める杖」
「わあ……」
その杖は、ゆっくりとフレイラの前に降りてきた。フレイラはそれをドキドキしながら受け取った。
(わたし、これからこのパーティで魔導士として活躍するんだ……!)
フレイラはその杖を右手に持ち、高く掲げた。
「ありがとうございます! わたし、頑張ります!!」
朝日は燦燦と輝いていたが、前方の森のほうには、薄暗い雲がかかっていた。




