第二十七話 フレイラは本音を知った
鎧を脱いだルティシアは、そのあとおかみが用意した夕飯を平らげ、空腹を満たした。宿屋には他の宿泊客もいるようだったが、どういうわけかサーヤたちはほとんど無視されていた。フレイラは試しに宿泊客たちの心を読んでみようとしたが、アルテミシアに止められた。
浴場の様子を覗いたアルテミシアに「いいよ」と囁かれて、フレイラは仮面をとり、四人で入浴した。深夜である上、扉はサーヤの魔法で封じられている。
「あともう一人、欲しいなあ」
と、湯に浸かりながらサーヤがつぶやいた。
「もう一人?」
フレイラが尋ねると、アルテミシアが頷いた。
「戦士がいいって。私は遠距離戦闘型だから、近距離にはあんまり強くないのよね。で、剣士のルティシアちゃんには斬り込み隊長してもらうから、私とサーヤを守る近距離型の戦士が欲しいわけ」
「そうですか……」
フレイラはルティシアがいればすぐに戦闘ができるものと思っていたので、少し残念だった。
「もし、わたしの知っている限りで一番強い戦士でよければ、会ってみる気はないか?」
ルティシアの突然の提案に、サーヤは驚いたようだった。
「会う」
「まだどんな人物か話していないが……」
「どんな人なの?」
「ここから馬で数日かかるが、『迷いの森』に一人で住んでいる、ミレイという名のダークエルフがいる。――っと、あっ」
ルティシアはようやく自分の失言に気づいたようだった。
「そういえばあなたがたは、エルフだったな……ダークエルフと一緒にパーティを組むのは、無理か」
「無理じゃない」
サーヤは湯から半分出て、湯舟の縁に座った。
「ミレイには会ったことがある。でも今どこに住んでいるかは知らなかった」
「大丈夫なのか?」
「大丈夫。前に会ったとき、いつか一緒に戦おうって言った」
アルテミシアが口を挟んだ。
「それ、相手は忘れてると思う」
「い……いや、約束した!」
「いつの話?」
「……忘れた」
サーヤは、むっと口を尖らせてまた湯の中へ戻った。アルテミシアは、笑って誤魔化しながら言った。
「ルティシアちゃんは、ミレイさんとどうやって出会ったの?」
「わたしは、とある指令を受けて一個小隊を率いてたまたま『迷いの森』の近くを通ったのだが、そこで盗賊に遭ったのだ。その盗賊たちが、案外手練れで苦戦していたときに、ミレイが助けてくれた。彼女はわたしが知る限り、最強の戦士であることは間違いない」
フレイラは思わず声をあげた。
「行きましょう! 『迷いの森』へ!」
「あら、フレイラちゃん、急に積極的になってどうしたの?」
「女性が必要なんです」
フレイラは肩を震わせた。
「私…私、女性だけでパーティを組みたいんです! 男は要らない…女だけで最強のパーティを作って、冒険して、しっかり稼いで、そのあとはみんなでリタイア生活楽しみたいです!!」
言葉にして初めて、フレイラはこれほど強く自分が思っていたことを自覚した。




