第二十六話 フレイラたちは宿屋へ行った
サーヤとアルテミシアが泊まっている宿屋「白鴎亭」は、街のはずれにある。おかみは二人をエルフだと知った上で長期滞在も優遇している。
「あら、お帰りなさい。これ食べる?」
「食べる」
サーヤはおかみと親しいようだった。籠いっぱいのパンを受け取って、早速もぐもぐし始めている。
「おかみさんの焼いたパンだけはいっぱい食べるのよね」
アルテミシアがフレイラに囁きかけた。
「これあげる」
サーヤが赤みのある丸い小さなパンをひとつ、フレイラに手渡した。フレイラが一口かじってみると、不思議な甘みのある味がした。
「美味しい……」
「でしょ」
サーヤは得意そうである。アルテミシアがまた、フレイラの耳に囁いた。
「何か変化を感じない?」
「え?」
そういえば何か体の中に、元気が戻ってくるような感触があった。
「あ……なんか、回復している……?」
「そう。実はね、この赤いパンは使った魔力を回復してくれるの。全部食べちゃって?」
食べてみて初めて、フレイラは自分が魔力をけっこう消費していたことに気がついた。そして、サーヤはフレイラが赤いパンを食べ終わるのを見計らって、次のパンを手渡した。
「これ、食べて」
「あ、はい。こっちはなんですか?」
「それは魔力の最大値を上げてくれるパンよ」
「へえ……すごいですね。おかみさんは何者なんですか?」
サーヤが答えた。
「薬師」
ふっくらとしたおかみさんはフレイラを見てニコニコしている。アルテミシアが説明した。
「一流の薬師は、パンでもなんでも、魔法効果をつけられるのよ。フレイラちゃんにもできるようになるから」
「本当ですか!」
フレイラは目をきらきらさせてアルテミシアを見た。
「わたしにもそのパンをひとつもらえないだろうか?」
ルティシアがサーヤに話しかけると、サーヤはにべもなく「だめ」と言い放った。
「今のあなたはステータスマックス。なんにも付加する必要ないし」
「でも、お腹空いてるんで……」
「別のもの食べて」
サーヤは満足げにパンをもぐもぐしながら階段をのぼった。




