第十七章 フレイラは師匠を運んだ
その夜、フレイラは酔い潰れて寝てしまったサーヤを宿屋まで運ぶことになった。普段はアルテミシアがやっているらしいが、彼女に言わせれば、
「私は妹だけど、パーティーに入るんであれば私が先輩。ってことは、新入りのアナタが運ぶのが、スジよね」
とのこと。諦めて、大人しくサーヤを背におぶった。フレイラの荷物はアルテミシアが運ぶことになった。
「サーヤさんて、不思議なほど体重軽いんですね。いつも何を食べてるんですか?」
「ああ、彼女、普段は花とか草しか食べないの。調理もしないで摘んだらそのまま口に入れてモシャモシャしてるわ。だからガリガリに痩せてるのよね」
「きゃっ!」
寝ぼけたのか、おぶられていたサーヤがフレイラの胸を両手で揉んだ。
「ちょっと、くすぐったいです、サーヤさん!」
「⋯⋯でっか」
「そ、それはしょうがないです、ていうかやめてください!」
「ケチ⋯⋯」
サーヤは大人しく揉むのをやめて、またスースーと寝てしまった。フレイラは、千年以上生きている大魔導士なんだと自分に言い聞かせつつも、「子どもみたいな人だな」と思った。それは決して悪い気分ではなかった。
前世の記憶を取り戻す前は、なんの疑いもなく、完璧な王妃になることが自分の未来なのだと信じていた。だが、今となっては、そんなものに興味はない。
(仲間か⋯いいな⋯)
パーティーに入って、魔法を学んで、冒険者になって、稼げるだけ稼いで、お金を貯めたら、あとは好きな場所で悠々自適な生活をしたい。
男なんて要らない。世界のいろんなところへ行って冒険して、女だけのパーティーでモンスターを倒す。そしてパーティーのみんなで一緒に暮らす。
(素敵な思いつきだわ)
知らず、フレイラは嬉しげな笑顔になっていた。
「⋯⋯」
アルテミシアは、不思議なものを見る目で、姉を背負って隣を歩くフレイラを眺めながら歩いた。




