第十六話 フレイラは師匠と出会った
その人物は深く被っていたフードを外した。さらりと長い緑色の髪が流れた。長い耳には無数のピアスがつけられ、額にも宝石を飾ったティアラがある。
一目見て惹きつけられる美しさだった。青碧色の瞳には、角度によっては赤みがあったり、黄色みがあったりする、不思議な光が湛えられていた。
サーヤと呼ばれたその女性のエルフは立ち上がって、つかつかと歩み寄ってきた。皆、彼女の一挙手一投足に注目した。
サーヤはいきなりフレイラの仮面をちょいとずらし、素顔を覗き込んだ。フレイラは驚いたが、ぴくりとも動けなかった。
「ふーん、綺麗な娘ね」
フレイラの仮面をサーヤが離すと、まるで呪縛が解けたようにハッとして、フレイラは慌てて仮面のずれを直した。
「なんで弟子入りしたいの?」
「あっ、あの、魔法ってまだあんまり使ったことがなくて⋯⋯」
「?」
「⋯えっと、冒険者として生きていけるように、魔法のことを深く知りたいんです」
「よく意味がわかんないわ」
サーヤはしゃっくりをした。
「酔っていらっしゃる⋯のですか?」
恐る恐るフレイラが尋ねると、サーヤは笑い出した。
「サーヤは、飲まない時は寝てるときだけなの〜」
サーヤの後ろから顔を出したのは、髪の色こそ金髪で碧眼だが、顔立ちはサーヤそっくりなエルフの美女だった。
「私はアルテミシア。サーヤの妹。と言っても千年くらい年は違うんだけど」
「せっ、千年?!」
「あなたの名前は?」
フレイラは少し口ごもった。
「ふ⋯フレイラ⋯です」
「へー」
アルテミシアとサーヤには、嘘は通じないのではないか、とフレイラは危惧した。その透き通る瞳には、なんでも見透かされてしまいそうだ。
「どうするの? サーヤ」
「何を? ヒック」
「弟子入りよ」
「あー?」
「この子の。フレイラだって」
「別に、いいんじゃない? ヒック」
サーヤは手に持ったジョッキから酒をあおった。
「いいってさ。よかったね、フレイラちゃん」
赤髪巨乳受付嬢が言った。こうなることは、彼女にはわかっていたようだった。
「あ、ありがとうございます⋯⋯」
トントン拍子にうまくいったことは驚きだったが、この最低でも千年以上は生きているという酒豪エルフがいったいどんな魔導士なのか、フレイラはやや不安をおぼえた。




