第一話 レイアは怒っていた
新連載です。
よろしくお願いします。
レイアは怒っていた。
というか、怒り狂っていた。
なぜかといえば、前世の記憶が突如蘇ってきたせいである。前世の彼女は若くして死んだ日本人女性で、その人生はあまりに、多くの身勝手な男たちに翻弄され、蹂躙され過ぎていた。
それは生まれ変わったあとの十七歳のレイアをひどく苛立たせ、男性不信にさせてしまった。
今日までのレイアを知る者にとっては、想像もつかないような変化だった。レイアは次々と止めどなく蘇ってくる過去の人生のしがらみの記憶に苦しみ、ふらりと倒れかかった。
「レイア、大丈夫か?」
抱きとめたのは、彼女の婚約者・ローランド第一王子である。
レイアは幼い頃から王子の許嫁としての教育を受けており、才色兼備の見目麗しき完璧な淑女として名を馳せていた。
それは王子も同じで、美しい容姿に完璧な所作、性格も明るく、誰もが羨み尊敬する頭脳の持ち主であった。
ローランド王子はこのカルバドス王国の跡取りとして既に確定し、今後のすべてを二人で担っていくと誓いを交わした相手なのだ。
だが、そんな王子が婚約者の口から聞いた言葉は、到底信じられない一言だった。
「触らないで」
レイアはローランド王子の手を強く振り払い、突き飛ばした。そして暗い表情で告げた。
「婚約は破棄します。二度と私に近づかないで」
晩餐会に来ていた貴族たちはざわつき、やがてカルテットの演奏も中止され静かになった。
「レイア、婚約破棄だなんて、一体どうして」
「口もききたくないのよ! 話しかけないで! あんたなんか大っ嫌いなの!」
「レイア!」
止めるのも間に合わず、レイアは階段を駆け下りていった。
残された王子は、ただ呆然と立ち尽くしていた。




