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夭
あの日に聞いたあの言葉。
小学校に入ったばかりの頃の記憶。
父親とのお風呂からひと足先に上がったあなたは、居間でテレビを見ながらちんちんの皮を引っ張ったり離したりして遊んでいた。
ひとしきり遊び終えたあなたはようやく肌寒さを感じ、服を取りに行こうと立ち上がった。
パジャマに着替えて居間に戻ると、テレビの前にあなたがいた。
「ママ、りんごたべたい」
テレビの方を向いたまま、そう言った。
「もう剥いてあるわよ〜」
優しく言いながら、あなたの母親はりんごの乗った皿をこの部屋へと運ぶ。
テレビの前まで来た母親と、あなたがこちらを振り向いて、同じように口を動かした。
「はやく気づいたほうがいいかもねえ」
あなたの記憶はそこで途切れている。