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アンハッピー・アライブ  作者: 八千夜
7章 不死に至る路

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邪魔をするなら準備から

 やっとのことでⅧの魔術が解かれてその姿を収めることできた。

 雪広にとって自分と似た系統の魔術に敗北したことは久しくなく、力の及ばないところに自分自身としてもあまり満足できていなかった近況を鑑みると、それは酷く自尊心を傷つけられた。

 それが格上の存在というのはそうなのだと前提において、偶々今回は魔術が雪広に振るわれたのだけれど家接と距離が引き離されている感じがして彼女としてはすごく悔しかった。

「家接、何か手伝えることある?」

「僕が引きつけるから、ここから出る方法を考えて欲しい!」

 真っ先に考えていたこと、この魔術がどういった能力を有しているのか。少なくとも魔術学園にいた校長のような星に関した魔術であることは確かで、それ自体の文献がそもそも少ないから全容がつかめない。

 また私の魔術が通じなかったらどうしよう。カラ爺たちも守り切れなかったこの力で家接を守ることはできるの?

 疑問はさらなる疑問を自分に投げかけてきて、自問自答は終わらない。

 そんな状態だった自分をハッと我に返らせてくれたのは他でもない家接だ。

「どうしたの?何か魔術の攻撃でも喰らったとか?」

 彼は霧を出し続けたまま私の体調を心配して様子をうかがう。もちろんそれは精神的なものだから見た目には現れない。だけどこれ以上自分がこんなところで考えている暇は無いということだけがはっきりと家接に気づかされた。

「いや、気にしないで。もう私は大丈夫。家接は目の前に集中して。絶対ここから出してみせるから」

 まだ心配そうな家接だったけど決意の籠もった彼女の顔を見てその考えをすぐに改める。

 相手はきっと正真正銘の魔術師。その見目から判断してもれっきとした魔法少女と名乗っても偽りないと思う。

 霧が晴れて相手の顔がはっきり見えると、その表情には余裕を感じる。この魔術が成功した時点で勝ちを確信しているのか。空中から降りてこないままこちらを見下ろしている。

「降りてきて僕と戦わないのか」

「そんなあからさまな挑発には乗らないよ~。私が真っ正面から家接くんと戦ったら勝てないのは占わなくてもわかることだからね」

 それは家接も分かっていた。Ⅳのような圧倒的戦闘能力を有しているとは思えない。もしそんな力があるんだったら、こんなまどろっこしいことをしないで最初から僕達を潰しに来ていたはず。

 それともカラ爺が邪魔だった?

 確かにカラ爺がいればこの戦況に関しても手放しに勝てるとは考えなかったのだろう。

「くそっ!」

 やっぱりダメだ。的確に僕の魔術の範囲を読まれている。

 こえじゃあいくら撃っても届かない。

「それすらも読んでいるみたいな魔術空間の設定に感じる」

 この相手が数字を貰っている相手だと言うことはここまでの行動を見ても分かる。最初からこっちは相手の罠にかかりにいってしまったんだ。

「雪広、まだ無理そう?」

「無茶言わないで!せめて二分は耐えて!」

「二分ね、分かった」

 相手が攻撃してこないなら二分も耐えられるだろう。それまでに相手が攻撃してこないなんていう保証は最初から無いわけだけどそれさえしのげば逃げの手はまだある。

 そして、それはまたⅧの掌の上の出来事に過ぎない。

「逃げるんだ~」

「そもそも、僕たちはあなたと戦う気はない」

 こんなところで時間を潰していてはせっかく占星術によってⅠの動向が分かろうとしていたのにその成果も水の泡にしかねない。

 家接の攻撃を躱しながら彼女はまた新たに詠唱を始めた。その瞬間、朧げに光っていたその空間内に映る星が瞬きだす。これは時間が間に合わないと思った家接は跳躍して彼女に手を伸ばすがあと一歩のところで届かない。

 やけくそになった家接は持っていた短剣を彼女に向かって投げる。詠唱に夢中になっていたからか、はたまた彼のその行動を予測できていなかったのか。短剣は彼女の箒の端をかすめると傷口と共に焦げ跡を作って煙を上げた。

 驚いた彼女は詠唱を途中でやめると、ゆっくりと地上に降りて杖の具合を確かめだす。

 その一瞬の手が止まった間に雪広の準備が整う。

「行けるよ家接!」

「分かった」

 すぐに雪広が発動してその空間に入っていく。だがその手前まで行ったところで爆発した、彼女の平常心が。

「やってくれたね。絶対、許さないから」

 詠唱もしていないのに空間内に散りばめられている星々が淡く光り始める。

 その光は点だったものが線へと繋がり、そしてそれは星座を形作った。

 そこから先、空間に入ったことで難を逃れたがあれを喰らっていたらまずいのは見なくても分かる。あれは人を殺せる魔術。

「っと、セーフ」

 空間が繋がっていた先はさっきまでいた空港。

 座標が分かっている場所がそこくらいしかなかったためだが、ここから三人をまずは探さないと。

「あの子、普通にヤバい。もし次追いつかれたら確実に撒けないから移動しながら話そう」

 雪広の指摘の通りだった。二人合わせても勝てないのは今しがた理解したところだ。外国だからかはしらないけれど連絡が取れない今、頼りになるのは感じ取ることのできる魔力の流れのみ。

 幸い先祖返りの力を使ったばかりだったこともあってはっきりとその魔力を感じることができる。とはいっても近くにⅠと同じ魔力は無いけれど。

「待って。今すぐタクシーに乗ろう」

「どうしたの」

「さっきの子がこっちに来てる、それも凄い勢いで」

 魔力が体から溢れている。こっちにそれが一直線に向かってきているのを感じ取った。距離もそこまで遠くないし、時間もない。近くにあったタクシーにさっそく乗り込んだ。

「行き先……何かしってる場所とかない?」

「万里の長城くらいしか知らないよ」

「僕も」

「じゃあもうそれで!」

 料金がどうとか言われたけどそんなことは今はどうでもいい。とにかく彼女から離れる手段を考えないことにはどうしようもないんだから。

 タクシーが出発して後ろを見ると魔力が離れる様子はない。

 こうして、Ⅷとのカーレースが幕を開けることとなる。

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