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アンハッピー・アライブ  作者: 八千夜
7章 不死に至る路

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指に絡まるその姿

 Ⅰの現在地を特定する方法として選ばれた占いだが、魔狩師協会には都合よくその手のスペシャリストがいる。魔狩師協会では相変わらず、カラ爺は顔が知れている。行き交う人と話をしながら歩いていると目的の人と出会うことができる。

「久しぶりだね、緩金くん」

「お久しぶりですカラ爺。相変わらずお元気で」

「僕はまだそんなに年老いてないよ」

 男は揺金御劔と言う人だった。彼は協会内では一番腕があると言われているらしく、カラ爺の教え子だったということからすぐに連絡が付いたという。

 師匠との久しぶりの再会ではあったが、彼は目的であったⅠの占いついての話を始めた。触媒としての写真だったが、1度使えばそれを用いた追跡はそれ以上不可能になるというのは織り込み済みとして準備も整えておかなくてはならない。直ぐに出れる準備が出来た状態になってから再び訪れると彼は部屋の真ん中に水晶玉を布の上に置いていた。

「占星術と言っても万能では無いんで、一瞬しか見定めません。ですからできるだけのことはしますよ」

 彼は地図を広げるとそこに1本の針を置くと、写真を水晶玉の前にセットする。彼が呪文を唱えると水晶が少しづつ青白く光っていき、部屋が包み込まれていく。

「ここだ。導け」

 光が消える瞬間に彼は片方の手を地図に向ける。光が収束したものが針に宿ると、それは明確な意思を持って地図上に突き刺さった。その瞬間、何か魂が抜けたように写真からは魔力のような何かが薄まっていく。

「彼は今、針で刺した上に居ます。見えた景色からしても間違いないです」

「というと、彼は飛行機に乗っているということかな?」

「はい。まさに中国に向かってますね」

 場所が分かった瞬間、カラ爺はエンジンをかけて車を走らせた。雪広が社内で一番早い飛行機の便を調べて予約を済ませる。途中でカラ爺の携帯が震えて助手席に座っていた僕がスピーカーをオンにして出た。

 運の良いことに、中国行きの便は着いてすぐにあるということでそのまま流れるようにして乗り込む。いつの間にか用意されていたパスポートを持たされて手ぶらのまま搭乗口に乗り込んだ。

「すごいね雪広。そんなに手際よくできるなんて」

「別に。前にも同じようなことがあっただけだから」

 海外に行ったのがこの間だった僕には想像も付かないことなんだろう。

 後ろではマイクラストとメイニーがそわそわしていた。名前からして海外に行ったことはあると思っていたけど、そうではなかったみたいで飛行機を見て顔を輝かせている。

「にしても、こんなに人が乗らないものなんだ」

「そうだね。もうすぐ離陸の時間なのに、少し変だね」

 それから乗り込んでくる乗客は数人。静かになっていく機内で五人は何かをすることもできずに時間が訪れる。

 乗り口の扉が閉じた瞬間、一番最初にその異変に気がついたのは雪広だった。

 とは言ってもそれは異変とは言い難い何か違和感と言ったほうがいいもので、それもすぐに忘れてしまう程度の事。

 目を向けた瞬間、彼女は振り返った。目が合った雪広はすぐに目を逸らそうとしたが彼女は笑顔でこちらに会釈をするとすぐに前を向く。

 あまりにも綺麗なその整った顔つきに同性である雪広も一瞬目を奪われる。きっと同年代なのだろうと思いながら再び彼女を見ようと席の方に目を向けるとその姿はない。辺りを見てみるけれど、まるで神隠しにあったかのようにどこの席にも彼女の姿は無かった。

「雪広、どうしたの?」

「……なんでもない」

 周りをしきりに見る雪広に異変を感じた家接が声をかけたけれど、飛行機が動き出したのを感じてアイマスクを下げた。

 何事も無く飛行機は国境を越えて着陸する。家接に方を揺すられて目を覚ました雪広は数時間の旅路だったけど十分に眠った気分になった。頬を叩いて目を覚ますと、あまりにもすかすかな座席から出る人々の中にあの少女がいないだろうかとふと思い探す。

「やっぱり」

 扉が開いてから見ているのに結局自分たちが最後に出るまでに彼女の姿を見ることは叶わなかった。

 あれは一体何だったんだろう。ただそれだけが彼女の気がかりとなる。

 それはそれ。本来の目的に戻ろう。

 空港を出て少し歩く。道に沿って歩きながら通りを進んでしばらくすると開けた所に出る。そこでいったん止まるとカラ爺は自分の懐から札を何枚か出した。

「さて、こっからは手がかりがほぼ無いから頑張ろうか」

 カラ爺は鴉を出して偵察を始める。

 この中国に彼が訪れたことだけは確かな事だ。そこから彼の動向を探るにはこちらも行動を起こさないといけない。

「その前に、みんなは気にならないのか」

 マイクラストが偵察のために鴉を飛ばした後に言った。彼は家接やメイニー、そして雪広にも目配せをしてからカラ爺を見る。家接も短剣に手をかけていて明らかに警戒を強めている。

 一人ついて行けてない事態が妙に怖くて雪広はその場に合わせた。

「ばれちゃいました?」

 見た目、仕草、態度。その全てが、まるで等身大だった。

 大きな杖を手にしたその少女は、身丈に合わないその杖に振り回されるようで。大きなその帽子も彼女をより小さく見せる。黒を基調にしたその服は典型的で白いその肌が際だった。

 愛嬌のある可愛い顔が帽子の下から覗き込むと思わず目を奪われそうになる。

 そしてその隙を作った彼女はすでに一人、自らの手中に収めていた。

「私の姿が、まだ見えている?」

 その言葉の真意を理解できる者はいない。理解している者に彼女はすでに見えていないから。

「どういう意味ですか」

 家接の言葉に彼女は笑って流す。

「ん~ん、大丈夫だよ。家接くんが無理に答えなくても。これは私の意地悪な質問だから」

 杖を両手で握った少女は帽子を揺らしてまた笑う。

「Ⅰを探しているなら、残念だけど諦めてね。これが私の役割だから」

 鏡が砕けるように視界が割れる。

 最後になってやっと気がついた。これは私が魔術を使えないようにするためなんだと。

 空間系の魔術を使う雪広をあらかじめ対策してのことだ。気づいて彼女の存在を再び知覚したときには遅い。家接が機転を利かせていなかったら一人取り残されていた。

「あれ、あなた以外全員飛ばしたつもりだったのに」

 残念そうに呟いた彼女はすでに自らも退場の準備を整わせようとしている。

「ごめん。僕しか残れなくて」

 謝った家接は悔しそうに呟く。だが無理もなかった。あのカラ爺ですら欺いたんだ。この相手はただ者じゃない。

「帰らせないよ」

 すぐに彼女の空間魔術の上に自分の四方印を重ねて相殺する。彼女はああそうか、と遅れて気づいた様子でこちらを見た。

「そうだ、そうだった。忘れてたよ~」

 彼女は杖を軸に回ってみせると着地した足で地面に波紋を生んだ。

「私はⅧ。よろしくね、家継くんと雪広さん」

 地面は空を反射したように、星空が映されていた。

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