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アンハッピー・アライブ  作者: 八千夜
6.5章 洋館への導き、頂への湖底

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残された約束

 嘘を吐いてほしくなかった。ただそれだけだった。

 置いていって欲しくなかった。ただ俺を側においてさえくれればよかった。

「くだらない」

 男は廃れた屋敷を眺めて呟いた。


 屋敷について早々、カラ爺は急に慎重になる様に言ってきた。

「どうやらここはⅠがかつて住んでいた場所みたいでね、今もまだ残留した魔力を感じ取れるくらいにはここで何かを行っていたんだろう。雪広ちゃん……は来てないか。メイニーちゃんも?なら男三人だけどやろうか。汚い仕事は女子には辛いだろうから」

 今頃、雪広たちは海で遊んでいるのか。なんとも言えない気持ちだが夜ご飯は彼女達に任せることになっているのでまぁいいかとなった。それを聞いてカラ爺も納得していたし。

「先頭は僕が入るよ。二人は一応外を警戒しておいて。トラップがまだ不発で残っているかもしれないから」

「分かりました」「了解」

 カラ爺が屋敷に入ってしばらくするまで警戒を怠らなかったが結局大丈夫だよとカラ爺が声をかけてくるまで何も無かった。

「でも、中は意外と普通だったよ」

 二人も中に入って思ったが、カラ爺がそう感想として呟く程度には本当にいたって普通の屋敷といった印象を受けた。それは別にいい悪いに関係なくだ。

「ただ古びているだけ……。何かⅠと繋がるようなものが見つけられたらいいんですけど」

「でもこの感じ、住まなくなって数年って感じじゃなさそうだな。もっと経ってる」

 机には誰かの食事の痕跡があるが時間が経ち過ぎてそれが何だったのかはもはや調べる余地はない。他にも書斎や寝室にも入ってみたけどこれと言ってⅠが誰であるかなんてものを特定するのに至るような手掛かりは無かった。

「さすが、隠蔽はしっかりこなしてるあたり、足をつけるのは難しいかもね」

 だけどその何でもない手掛かりからまるで糸を通した針のように出来事が繋がっていくことも無いことはない。念のために三人で屋敷の中を調べて回った。

「こういうの、時間の無駄って言うんじゃないのか」

「そんなことは無いよマイクラストくん。この世に無駄なことなんて一つもない。今日はここに手掛かりが無かったということが分かったんだ。それだけでいいじゃないか。それはつまり残りの数日はバカンスに費やしていいっていうことの裏返しでもあるんだからさ」

 日も暮れて来て屋敷の中も薄暗くなってきた。もう一度調べるにしても明日の方が良い頃合いだ。

 カラ爺もそのつもりでいたが、残念ながら今日はmだ一人訪問客がいる。

 二階から階段を使って降りようとしたとき、屋敷の入り口が開く音がした。一瞬、雪広たちが待ちきれなくなって呼びに来たのかもと思ったがそんな思いはすぐに断ち切られる。カッ、カッと床に散らばったガラス片を踏み歩く音。そして感じたことのない魔力。そして極めつけは……。

「おい、誰だ。俺のこの古巣に勝手に入ってきている馬鹿どもは」

 その声には怒りは無い。だがしかしその魔力は明らかに敵対者として僕たちを捉えている。

「おーーい。聞こえてんだろ。さっさと出てこい」

 僕とマイクラストは言わずもがな、カラ爺もその場から声を発することは無い。ただ静かにカラ爺は二階に設置された窓の方を指差して服の内側から出した三枚の札を投げる。

 そのうちの一枚が紙飛行機の形になり、窓ガラスを突き破った。

「先に雪広ちゃんたちに知らせて。僕は彼をここで止める」

「分かりました!」

 家接とマイクラストはそこから飛び降りて雪広たちのところに向かう。もちろんそれを察して下の階にいるおとこは外に出ようとしたがカラ爺はそれを許さない。

「格納、装填、発射。ことごとく」

 すでにサテライトを配備している。しばらくはこれで外に出ることはできない。もしできるとするのなら、術者であるカラ爺を倒さなくてはならない。階段を上がってきた男は口の端を上げながら笑う。

「お前、中々やるみたいだな」

「お褒めに預かり光栄だよ。Ⅰの住処にを古巣っていうことは関係者、もしくは本人かな?」

 それを聞いて男は機嫌を悪くする。

「あんな人でなしと一緒にするなよ。少し、腹が立ってきたな」

「酷い八つ当たりだ」

 男が拳銃に手をかけようとした瞬間、カラ爺は袖に隠していた札を出す。

 銃に触れた瞬間、目にもとまらぬ早打ちを男は見せたがコンマの差でカラ爺は魔術を発動し終える。

 呼び出されたのは扇子。その扇子は呼び出されると同時に開かれて男の撃った銃弾を防いだ。

「久しぶりに朝露を出したよ。やっぱり持ち手がしっくりくる」

「何言ってんだお前。というかあれで死なないのか」

「まぁちょっとこの子はズルみたいな魔術が施されているからね。僕の自慢の十八番の一つだよ」

「ははっ、おもしれえ」

 男はすかさず二発目を撃つ。それ以外の攻撃をしてこないあたり、ガンマンの腕にはかなりの自信があるらしい。確かにさっきの一撃も朝露が無ければ心臓を撃ち抜いていただろう。

「でも」

 カラ爺はその弾丸を片手で受け止めて見せた。

 そのまま地面に落ちた弾丸を見て男は声も出せなくなる。

「Ⅰに敵うかもしれねえ奴を見たのは久しぶりだな。これなら俺も本気が出せそうだ」

「そうかい?僕も朝露を出してる時点でだいぶ本気なんだけどね」

「でも全力じゃないだろ?」

「……切り札は何枚あっても困らないからね」

 カラ爺はこの時、男がⅠの関係者であることは確実だと見抜いた。カラ爺自身は謙遜しているが、彼自身は少なくとも魔術を扱う界隈の中では上澄みに相当する。大抵の魔狩については一人で解決することができるし難しいものについても頑張ればなんとかなる。その腕を買われてかつては教壇にも立ったし、こうして今も幾人かの魔狩師を見守るという立場にいる。

 No.0の幹部がただ者でないことは確かだが、かといって手の届かない存在ではないと心の隅でカラ爺は思っている。だからこそこの相手の力量と場所を鑑みればこの男は確実にⅠのことを知っていると踏んだ。だとするなら何としても身柄を捉えたい。

 今回のカラ爺は万全を期している。前回の失敗を踏まえたうえでだ。

「俺の早業に酔いしれろ」

 男はくさいセリフを吐くと銃を指でなぞり、魔術回路を起動させた。

 さながら、西部劇のガンマンのように。

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