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アンハッピー・アライブ  作者: 八千夜
6章 舞い降りる神、ただひたすらに屈すれば

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彼らの包囲網

「どこか気になるところはあった?」 

 紫音による村案内は無事に終わり、感想を聞くターンが回ってきていた。

 ここまで見て回って家接と雪広が思ったことはといえばなぜか異様に視線を感じるということだった。だけどそれは敵意と尊敬が入り乱れているような気がしてよく分からない。そしてそれを彼女にも聞くわけにはいかないので心のうちにとどめておくことにした。

「ただいま」

「悪かったな途中で抜けて」

「あっ、良かった体調はもう治ったの?」

「心配するな、少し頭痛がしただけだしいつものことだ」

「それならいいけど……」

 彼女が心配そうにマイクラストを見ているのを見て素直にこの子は誰にでも本当に優しいんだなと思った。これで浴びせられた視線の先がどう向いているかは大体わかった。

「そうだ、二人も戻ってきたところだしもう一回案内する?」

「それはさすがに申し訳ないです」

 メイニーが手を振って大丈夫ですよというジェスチャーをして、そう?と言いながら他に何かすることはないかと辺りを見渡していると突然「ぐぅ~~」という音が鳴った。

 犯人はすぐに見つかる、というか白状するように顔を赤くしていた。

「そろそろご飯でも食べないですか?」

 家接はそんな彼女に気にしないほしくて話を振ったが、それが犯人を指摘していると捉えられたらしくさらに顔を赤くしながら「そ、そうですね。………行きましょう」と言って彼女の家に向かった。

 中に入るとすでに家接たちが来ることは知らされていたのか人数分の料理が完成していて、母親であろう女性が待ち構えていたかのように茶碗を人数分置く。

「遅かったな」

「なんで大智がここにいる」

「俺の家がここなこと以外に何の理由があるんだ」

 マイクラストが突っかかったが彼はさも当然かのように返して来たので全員が驚いた。まさかこの二人が兄妹だったなんて。どうりで距離が近いと思ったわけだ。

「ちょ、勘違いしてるかもしれないけど私と大智は兄妹とかじゃないからね!」

「そうだな。俺にもこんな不用心な妹を持った記憶はない」

「それはいいすぎでしょ!」

「まぁまぁ二人とも。お客さんの前でしょ。喧嘩は後にしなさい」

 こういう光景を見ると根底のところでは家族なんて血は関係ないんだなと思う。

 全員が食卓に着くと手を合わせてご飯を頂く。味はやはり薄めだがそれでも温かいものがおいしくないわけがなかった。

 あっという間に皿が空っぽになってしまい一番大盛になっていた紫音の皿もみんなとほぼ同時に空になっている。

「たくさん食べるね、紫音ちゃんは」

「よく食べてよく寝るのが私の長所なので!」

 それを聞いて雪広も微笑む。やっぱりおいしくたくさん食べる子を見るのは気分がいい。

 そんなこんなでご飯を食べ終わってからも机の上で他愛もない話をする。大抵は村の外のことについてで、本も何もないこの村では外の世界というのはあってないようなもの。実際に自分たちからすればなんでもないことでも彼女は目を輝かせて話を聞いてくれた。それはあまり口数の少なく物静かな大智が耳を傾けてしまっているほどだ。

「ふわぁぁぁ~っ」

 雑談が過ぎただろうか。紫音は覆った手から溢れてしまいそうなくらい口を開けてあくびをする。

 まだ昼だというのに彼女は寝る時間らしい。階段を上がって自分の部屋に向かう彼女を見送って居間は大智と家接たちだけになる。彼女の母親は外で仕事があるのでしばらくは戻ってこない。

 あの時の話の続きをするのなら今だ。

「あれから何か分かったの?」

「まあな」

 家接たちに比べればマイクラストたちは大きな成果をあげたと言ってもいい。

 とは言ってもそれは良い知らせというよりはどちらかというと悪い知らせではあるが。

「この村にいる奴らは推測だが、もれなく全員魔術が使える。少し俺がへまをしたせいでそれ以上の情報はないが、他にあるとするなら祭りの祭壇には水晶が置かれていた」

 祭りのことを置いておくとしても村の人たちが魔術を使えるということは非常に良くない。

 魔術を使えるならこの村に迷い込んだ人が誰一人としていないのも理解できる。彼らはその証拠を魔術という力ですべて消し去ってしまただけ。もし紫音がここから逃げ出すということになればそれは一大事。

 それに今回はその問題の大きさが異なる。祭りの最も大切な生贄が逃げようとしているのだ。たとえその命が失ってしまうことがあっても捧げなければならない。

「ということで、彼のお願いは想像以上に難しいかもしれないということですね」

「なら私の四方印で二人だけ村の外に出せばいいんじゃないの」

「それも最悪ありえるか。安全のことを考えるとあんまりいい案じゃないんだよな」

「雪広、忘れてると思うけどここに来たのはたまたま転移した先で紫音が助けてくれたからだってこと忘れてないよね。適当に転移するとああなるって身をもって経験したばかりだと思うけど」

「も、もちろんそれは忘れてないよ。だから最悪って言ったの」

 そう。せめて村の外の森を巡回している大智の力がここでは必要だ。彼がいれば少なくとも僕らだけで出るよりもよっぽど安全なはず。

「俺の話でもしていたか」

「………今までの話を聞いてたか?」

「魔術の話なら聞いてた。だが俺たちは魔術を使ってるという感覚はない。全員が全員同じことをできるわけでもないんだ、自分の仕事に合ってるから頻繁に使うやつもいれば使い道が分からず普通に生活をしているやつもいる。俺はどちらかと言えば前者だな」

 そう言って玄関に置かれていた槍を持つと電気が迸った。

「俺としては儀式に参加することなく紫音を連れ出して逃げるのが最適だが、別に儀式事態をできない状態にしてくれてもかまわない。ただ連れて行く方が早いからな。それにこの村には俺より腕の立つ奴は何人かいる。それが全員敵になるって考えるとあんまり良い未来が見えてこない」

 彼よりも強い人がまだ何人もいるのか。しかも魔術を使ってないかもしれない。

 連れて逃げることを選択するのもよく分かった。

「じゃあ儀式の前に連れて逃げるってことにしよう。先に逃げる人と追ってくる人を足止めする人の二手に分かれないと厳しいよね」

「私は紫音ちゃんと一緒にいた方が良いでしょ。逆に攪乱って意味なら家接の霧が良いと思うけど」

「僕も家接につくことにするわ。霧の中にゆらぎを無差別に使ったら時間稼ぎになるはずだからな」

 最終的に決まった当日の編成としてはちょうど男子と女子がきれいにわかれた結果となった。

「よろしく」

「あとは儀式の前日までおとなしくしてろ。変に動けば怪しまれるからな」

 大智が全員にきつく念押しをすると彼は森に行かなくてはいけないと言って一番に家を出た。

 通りをあるいていると大智はちょうど紫音の母親と遭遇する。

「あら、どこに行くの?」

「森です」

「いつもお仕事お疲れ様。これ、持っていって。途中で食べなさい」

「ありがとうございます」

 お礼を言ってその軽食を閉まっていると彼女が近づいてきて耳元で囁いた。

「居間で何の話をしていたの?」

 ビクッと体が反応して起き上がる。彼女は大げさな反応だと笑っていたので大智は外の話を聞いていただけと言ってその場を離れる。

 彼女は大智の背中が見えなくなるまで視線を外すことは無かった。

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