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アンハッピー・アライブ  作者: 八千夜
6章 舞い降りる神、ただひたすらに屈すれば

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朝焼けと熱帯夜

 寝覚めは暑さによるものだった。

 こういう季節だからだというのもあるけれど、暑すぎてとてもじゃないけどちゃんと寝ることができたのは数時間だと思う。クーラーも扇風機もない、自然に吹く風だけが体の熱を払ってくれる。

 どれだけ自分たちが恵まれた環境で生きているのかを再認識させてくれる。

 かと言って彼らが不便な生活をしているかと問われれば、それは違う。

「おはよう、朝だよ~!」

 元気な少女の声が聞こえてくる。眠りにつきたい一心で目を閉じていたがもう眠れそうにはない。みんな示し合わせたかのように起き上がって顔を合わせると全員心の中は同じらしい。その顔が何よりもすべてを物語っていた。

 紫音は歩きながら四人がこの村に訪れた目的について尋ねる。

「今日は、村について紹介するよ。確かみんなは村について調査しているんだよね?」

「うん。魔狩師協会っていうところからこの村で行われている祭りについて調べるのは今回の目的なんだ」

「へぇ、それならみんな運が良かったね。ちょうど今がその祭りの時期なの。みんながこの村を離れる前の日の夜。そこで祭りが行われるからみんなも参加できるよ」

 彼女はそれを嬉しそうに語っているのに、どこか悲し気にも見える。

 そんな彼女を見ていると振り向かれてどうしたの、と言われてしまいなんでもないとすぐに返す。

「祭りについて調べたいなら、この村の紹介はいらないかな」

「そんなことないよ。それに何か準備をしてきているみたいだし」

 雪広が気にしないで続けて欲しいと伝えると、よかったぁと安心した様子でそのまま村を歩いて進む。

「村の案内なんてしたことが無いから、ついつい家で練習してきたんだ。良かったよみんなが喜んでくれるみたいで」

 後ろを見るとマイクラストはとても暑そうに今も手で顔を仰いでいる。メイニーは朝からだけどそんなに顔色が良くない。

 家接はふと気になったことを彼女に聞いた。

「その、寝床を提供してもらっておいて言うのもなんなんだけど、朝食とかはあったりするのかなって思って」

 彼女は立ち止まると「あっ!」と言ってどこかに走りさってしまう。とは言っても和服なのでそこまで早くはない。しばらくして戻ってくると朝ご飯ができているから来て欲しいと言われた。

「みんなの分の朝ごはんもお母さんが作ってくれてたのを忘れてたよ。すぐに戻ったら怒られちゃった。思い出させてくれてありがとう、家接くん」

 朝食は質素なものだけど朝にはこれくらい優しいものの方が嬉しい。

 お腹もほどほどに満たされたところで彼女の母親にお礼を言って家を出る。待ち合わせていたのか、大智と呼ばれていた少年が家の前にいる。

「あ、おはよう大智。じゃああとはお願いね」

「ああ。任せろ」

 そう言って彼女は僕たちを置いて離れてしまう。どういうことか聞く間もなく彼女は家々の間に消えてしまい、目の前には仏頂面の少年だけが立っている。

 彼は自分がまかされた仕事を果たすつもりらしく、手始めに名前を名乗った。

「俺は鈴屋大智。しばらくはあいつと俺でお前たちを監視っていう名目で同行することになってる。よろしく」

 さっきと同じように挨拶を済ませると、彼女が去ってしまった理由を簡潔に話してくれた。

「たぶんあいつはお前たちに案内をすると意気込んでいたみたいだが、昼間であいつは戻ってこない」

「それはどうしt」

「まぁ話は最後まで聞け。あいつが昼まで手を離せないことを知るにはまず、七日後に行われる祭りについて知らないといけない。というより、調査っていうのはそれを調査するんだろ。だからついでに教えといてやるよ」

 この村で行われている祭りというのはお祭りのことではない。漢字に直せばそれは祀りだった。

 神卸を行うために五年に一度その依り代となるための生贄として17の少女を捧げる。それによって宿った神から神託を受け取るために毎年祭りを行っているという。

 残念ながらその祭りで今まで神から神託を受け取ることができたことはなく、神がその体に宿る時点でかなりの負担があるようで大抵は一分も満たない内にその体が耐え切れなくなって崩壊していくらしい。

「まぁ祭りのことはこれくらいでいいだろ。あいつが一旦離れたのは、今年の祭りで生贄になるのがあいつだからだ」

 さらっと言ったその衝撃的な言葉に目を見開いた。彼はその後も淡々と説明をしようとするので一度止める。

「え、あの子が儀式の生贄ってこと?」

「そうだと言ったろ。これは前回の儀式が行われた時から決まっていることだ」

 雪広が大智に問うもそれはすでに定められたこと。年齢からすれば小学生の時点でそんなことが決まっている人生なんて想像もつかない。

 でも彼女にはそんな素振りもないし、大智がそれに何かを言うこともないみたい。それが当たり前だからなのだろうか。

「俺はあいつの守り人だ。村の外の警備もあるが第一は儀式まであいつに万が一が無いようにすることだ。だから、あの時は手荒な真似をしてしまったから謝りはしたが悪いことだったとは思ってない」

 彼には彼なりの理由があってそんなことをしたのだ。

 

 結局時間が余ったので彼はみんなを森に連れて行って警備の手伝いをさせた。

 とは言ってもただ村を取り囲むようにして何回か歩いて回るという簡単なものだ。

「人が迷い込んでくることなんてほとんどない。数年に一人いればいい方だ。だけど今年は見ての通り一度に四人。こんなの俺の親でも聞いたことないって言われたな」

 歩きながら、森の中を進んでいると大智が突然立ち止まって四人を見た。

 何かあったのかと思ったがそういうことではないらしいというのは彼の行動を見ればすぐに分かった。

「こんなことを他所の人に頼むことはたぶん、いや絶対に間違っていることは承知でお願いしたい。俺と一緒にあいつを儀式に参加させないようにしてくれないか」

 頭を下げられた。

 あんなに冷静で常に緊張感を纏っていた彼が何のためらいもなくその頭を下げたのだ。

 それも彼女のために。

 全員がさっきの祭りの実態を聞いたとき以上に動揺し彼に頭を挙げるようにお願いするがその頭が上がることはない。

「俺に協力してくれるというまで俺は頭を上げない」

 あまりにも頑固すぎる。ほとんど身勝手といえるレベルのお願い?を四人は受け入れざるを得なくなる。というよりもそうしなければ話が進まないのだ。ここで彼が頭を下げ続ければそれは巡り巡って自分たちの村の中での体裁が悪くなるのだから。

「礼を言う。あとはあいつが来るのを待とう」

 また大変なことになってしまった。

 マイクラストはともかく雪広は面倒そうに、メイニーは純粋に紫音を心配していた。

 そうして何事も無かったかのように彼はまた森の中を歩いていく。

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