迷子の迷子の子供たち
「じゃあ、あとは頼んだよ。くれぐれも命が最優先ってことは忘れないように」
カラ爺はそれだけ忠告すると、村があると言われている森の前に四人を降ろすと車に乗って去っていく。
全員がそれなりの食料と武器を携えて乗り込む今回の作戦。とりあえず人が通れるような道がないのかを探して森の入り口付近に沿って歩くことにする。
「これで見つかったらいんだけど」
「逆にそれで見つかったら村が見つからなかったのはただ単に魔狩師協会の怠慢だろ」
「うーん。でも森の中に安全に入るのなら、そこから道を逸れていけばいいと思うので悪いとは思はないですけど」
メイニーの言う通り、どちらにしても森の中を探さないといけないのでとりあえず中心に近づくのには一番楽な手段だ。獣道なんかを通るよりもよっぽど安全に進めるのには変わりないので林道を見つけることができて彼女の言う通りそれにそって森に入っていく。
森の中はいたって普通といえば普通で、他の森に何度も入ったことがあるわけじゃないから分からないけれど変な所はない。進んでいくたびに自然がより近くなっているなと感じる程度で、時折聞こえてく鳥の声が響いている。
数時間くらい進んだところで、林道は突然終わりを告げた。
「うわぁ」
「行き止まりか」
そこには形成された川が橋を破壊して道を分断していた。恐らく洪水か何かで増水したことで橋が流されていたんだと思う。川を挟んだ先にはまだ道が見えているので進もうと思えばまだ進める気がするけれど。
「私があっちまで転移させるから。行くよ」
四人はあっという間に向こう岸にたどり着く。見上げるとさらに道は奥まで進んでいるようだけれど、さっきまでの道と違って舗装された形跡はなく深部に向かっている感じがする。
「少し、警戒した方が良いかもしれないね」
「安心しろ。一番後ろでいつでも攻撃できるように準備しておく」
そう言って今まで最後尾にいた雪広のさらに後ろにマイクラストが向かって一番前が家接、挟むようにメイニー、その後ろに二人が続くといった並びになる。
一番耐久力があるのは家接なので異論はないのだけれど、薄暗い森の中を先頭で進んでいくというのは少し怖い。一瞬の動物の動きが草木を揺らし、それに反応してしまう。
時間にして十二時ごろ。太陽が真上で照らしているというにも関わらず、四人のいる場所にはそこまで日差しが照らすことはない。お腹も空いたので昼ごはんにするが簡単におにぎりくらいですぐに出発することにする。
最も困ったことになるのはこのまま村も見つけられないままさらにこの道すらなくなった状態になった時に日暮れを迎えること。それならばさっさと村を見つけてしまいたい。日が沈んでしまったらしまったで火元を探すという方法を取ることもできるので一応まだ方法はある。
「魔力を感じるようになってきたな」
少しづつ思っていたけれど魔力がはっきりと感じるようになってきた。
ただその場所がはっきりと分かるわけではないので進み続けるしかない。
さらに進んでいくと遂に道が消えた。
「壁、終わりか」
「一体何を目指して作った道だったんだろう」
本当に謎過ぎた。ただ、目の前にある壁も崩れてできたものといった方が正しく、洞窟か何かがここにはあったんだと思う。だけど今となってはそれも分からない。
「道が無いってことは、やっと家接の出番だな」
「それって僕が言うセリフなんじゃ」
「いいから準備して家接。時間もあんまりないんだから」
雪広はつべこべ言う暇すら与えずに彼を上空に転移させた。
一瞬で視界が切り替わった家接は落下しながらも周りをとにかく注視する。火元のような明かりも無く、一体には森が広がっている。だが落ちる寸前に一瞬木々が生えていない場所を遠くに見つけた。
マイクラストのおかげもあって無事に着地することのできた家接はさっきみたものを三人に伝える。
「それで?どっちの方角にそれがあったの?」
雪広が家接に尋ねて彼は一瞬フリーズしたあと頭を抱えた。
「………忘れました」
すると雪広も頭に手を当てて「もう一回」と言って彼を上空に飛ばした。
今回は家接も学んだのか、短剣を抜くとその木々のない方角に向かって炎の斬撃を放つ。それをメイニーは確認してさっきの通り着地する。
「あっちです」
「じゃあ行こうか」
「おい待て」
雪広に肩を持たれる。恐る恐る振り返った彼女は笑っていた、口元だけが。
「なんですか、、雪広さん」
「この通り私はもう疲れた。村に着くまでおぶって」
僕は二人に助けを求めたが見向きもしてくれなかった、マイクラストと言えば「お前が悪いだろ」とだけ言ってメイニーと先に進んでしまっている。
「……分かったよ」
日が暮れるまで家接は彼女をおぶって進むことになってしまった。
暗闇の中の森を進むというのがあまりにも危険なことなのは誰でも知っているので近くにあった洞窟に逃げ込むことになる。その中で一夜を明かすと朝の日差しが静かに差し込んできて目が覚める。
「起きろ、もう朝だ」
マイクラストだけが当たり前のように起きて川辺で顔を洗ってきたらしい。
全員眠そうにしているのを呆れた様子で眺めている。最後に起きたのは雪広だった。文句を言うマイクラストの言葉を聞き流しながらマイペースに朝の支度を整えた。
基本的に村に着くまで、もしかしたら着いたとしても一番活躍するのは多分雪広だ。
だからこそ彼女の機嫌を損ねて良いことは何もない。とは言っても何をさせてもいいことになるわけではないけど。食料が少しづつなくなっていっているのを感じながら
「はいはい。起きればいいんでしょ。メイニーちゃん、どっちに行けばいいんだっけ」
「あっちです」
彼女が指さした瞬間、何の前触れもなく彼女は全員を転移させた。
そして次に目を開けると、視界が反転していた。
「うわぁぁぁぁああ!」
そのまま落下していくのを待つわけにもいかないので家接は短剣を抜くと壁に突き刺して真下にいた雪広を掴む。そして彼女がマイクラストを、彼がメイニーをとなんとか踏みとどまることに成功した。
「雪広、なんでこんなことするの」
「私だってわざとじゃないよ」
「いいからすぐにもう一回転移を」
「そう何度もすぐにできるものじゃないの!もう少しだけ我慢して」
「もう、死んでしまうんですね………」
一瞬下を見ると100メートルはくだらない高さがある。これは助からないな。
少しづつ短剣だけでは耐え切れないのか、刃先が岩を削って落ちていく。
「もう無理かも」
家接が弱音を吐いた時だった。
「みんな、手を離して!」
上からそんな声がした。顔を上げると一人の少女がこちらにむかって懸命に叫んでいる。
「殺すきか!」
マイクラストが彼女に怒号を放つが、こればっかりは彼が正しい。今離したら死ぬことくらい誰が見たって分かるのだから。
「いいから、早く手を離して!」
それでも彼女は真剣にこちらに向かって声を掛ける。もしかして何かあるのだろうか。
そう思うようになってきて上を見ると「早く」と急かす様子。
「何かあるんじゃない?」
「このままでも死ぬだけなら信じよう」
せーので、全員が手を離した。案の定落下していく四人。
あの子の顔が崖から覗くのが見えて「しょうもない人生だ……」と思いながらどんどんと小さくなる彼女を見ると、突然背中を押す感覚がする。
「風?」
突然崖の下から風が吹いて四人の体を宙に浮かせた。
それどころかさらに上へ上へと体が浮いていきそのまま声をかけてくれた少女のいる崖の上に着くことができた。
着地した四人は腰を抜かしたように地面にへたりつくと、彼女は良かったぁと安心した様子で息を吐く。落ち着いたところで、彼女が一体誰なのか聞こうとするとさらに後ろから一人の少年が現れる。
「こんなところにいたのか、紫音。………お前ら誰だ」
槍を首筋に突然当てられて顔を青くしながら、三人に助けを求めた。




