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アンハッピー・アライブ  作者: 八千夜
5章 誰にも触れない禁書目録

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眠れ、眠れ

 魔導舞踏会を控えた前日の夜。

 四人はあれから部屋のことを他言することなく粛々と学生生活を過ごした。二人にとっては久しいその日々を噛みしめながら現在、寮の一室。マイクラストの部屋に集まっていた。

「どうしてここなんだ」

「んー、なんとなく?」

「今のでお前が決めたのが分かったぞ」

 メイニーに詰め寄るが、その彼女は知らん顔をしてやり過ごそうとしている。

「いいから、作戦会議をするんじゃないの。そんなことする暇あるんだっけ」

 雪広が良い感じに話の脱線を元に戻した。

 四人が今話し合っていたことは先日の部屋にもう一度どうやって入るかについて。

 色々調べて分かったことだが空間魔術についての本というのは非常に少なく古いものが多いため、正確にあの部屋へと繋げている魔術が何であるのかは分からなかった。

「私の魔術ってそんなに珍しいのね」

「俺はこの学園に入ってから空間魔術を使うやつなんて聞いたことないな。だからこそ古い本しか残ってないんだろうが」

 なので、もし扉が開かなかったときはいっそのこと学園の建物すべてを回って探すという頭を使わない方法で探し当てることになった。

「まぁ、なるようになるかな」

 明日から開かれる大会を前に、先生たちは早めに就寝を取っている。そのためこの日の夜は最も警戒心が薄くなるのだ。寮の看守ですらそれは同じで、彼らもまた形式上看守室にいるだけで仮眠室で寝息を立てているのは部屋の外からでも分かった。

「今日ダメでも、魔導舞踏会が終わるまでに部屋に入る方法を見つけられればいい。猶予は5日間。幸いいお前たちは最初の競技だから時間を割けるはずだ」

「とりあえずここで話すより、先に行かない?」

 万が一ここで見つかるなんてことがあったらそんな話をするよりも先に計画がすべて台無しになってしまう。慎重を期して寮を抜けて校舎に入る。鍵はかかっていたがそこは雪広の魔術で全て解決した。

 真っ暗な校舎の中をあるくというのはいつになっても謎の背徳感を帯びている。

 自分たちの足音だけがより鮮明に聞こえるようになり、いつもは気にならない些細な音に敏感に反応してしまうようになる。

「着いたな」

 あの扉の前に着いた。

 こうして改めて向かい合ってもその扉にはなんら魔術の痕跡なんて無く、どうしてあんなことが起きたのか未だに分からない。鍵を開ける方法は、マイクラストのピッキングによって解決した。扉を開けるために雪広は手をかけた。

「開けるからね」

 彼女はゆっくりとその扉を開いた。

 そこには月夜に照らされている本が映っていて、あの部屋には繋がっていないことが分かった。開けたり閉めたりしてもつながる先が変わることはなくただただ扉の開閉の音が響く。

「こりゃダメだな」

 そのうちマイクラストが諦めた声をあげると、帰ろうとしていたので僕は彼の肩を持った。

「なんだよ。もう無理だって分かっただろ」

「でももう少し何か方法があるとか考えるものなんじゃ」

「だから帰るんだろ。ここで何かしてても意味ねぇんだから」

 不機嫌そうに彼は言うと今度は図書館の中に入っていく。

 そこには所謂普通の本が並んでいるところに加えて、魔術に関する本が並んでいる所もあった。

「俺はこっちでメイニーと手がかりが無いか探しておく。何か見落としてるかもしれないしな」

 家接と雪広は他に何かできる方法がないかと扉の前に立ち尽くしていた。

「って言っても、やれることはほとんどやった気がするけど」

「あの時何か感じたこととかあったりするの?」

「感じたことか……。でもまぁ私の四方印で転移するときと似たような感覚は味わった気もするようなそうじゃないような。というより、他の人の空間魔術ってあんまり経験ないから具体的に言葉にはしづらいと思う」

 家接もそれについてはあまり深く言うことができない。それに家接からすれば彼女の魔術しか見たことがないのであの一回だけではなんとも言いようがなかった。

「もしかしたらこの扉自体に何か魔術式が施されていたりするんじゃないかな」

「そんな単純なつくりなの?そんなので発動するんだったもうとっくに見つけられてる気がするんだけど」

 魔術学校ということもあって普通の社会では考えられないほどの魔力がここでは流れている。魔術の授業が存在していたり、今回の魔導舞踏会なんかがあることも見れば魔力にさらされる機会というものは少なくない。そして家接たちが来てからすぐにそんなことが起こったというのも都合が良すぎる気もする。

「考えたんだけど、それもこれもただ単に適正じゃなかったからじゃないかな」

「適正?」

「うん。あの日のことを思い出してみてよ。雪広はマイクラストと模擬試合をしたよね。その時の魔力の影響で扉に仕掛けられた術式が誤って発動したんじゃない?」

 それなら今までこの扉を通ってそんなことが起きたことがないことや、今扉を開けてもその部屋に繋がらないことの説明がつく。あの日ここに来る前に使った彼女の魔術によってさらされた魔力によってこの扉の魔術は発動し、ほとんど通ることのないこの扉をたまたま使ったことでそれが割れた。

「つまり、雪広の魔力じゃないとここの扉の術式は発動しないってことだと思う」

「考えてても意味ないか。家接の言う通りだったらこの扉があの部屋に繋がるってことだから」

 そう言って雪広は扉に手を当ててから魔力を流す。彼女としては手ごたえがあったのか、家接に「開けるよ」と言って扉を押した。

 薄暗い部屋に埋め尽くすようなその棚の数々。それはあの時に見たものと同じ。

「二人とも開いたよ!」

 と雪広は言ったが、繋がっている扉の先はあの部屋。声が届くことはないので回り込んで閉じている扉を叩いた。ゆっくりと鍵が開く音がしてゆっくりと開かれると非常に警戒した様子のマイクラストがいた。

「なんだ、二人か。てっきり警備の人に気づかれたと思った」

「それはごめん。というかそんなことはどうでもいいよ。扉が部屋に繋がった」

 四人が戻るとすでに扉はその繋がりを失っていたが、もう一度魔力を流してから扉を開けるとあの部屋に繋がった。これで彼女の魔力によって部屋に繋がったということがほとんど確定的になった。

「これで安心して中を調べられる」

「そうだな。まずは何の部屋なのかを確かめないと」

 家接たちは再び禁則の地に足を踏みいれる。

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