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アンハッピー・アライブ  作者: 八千夜
5章 誰にも触れない禁書目録

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・・・---・・・

 日本についてからの話。カラ爺はいつものように作業をすることもなく居間で僕たちの帰りを待っていた。奇想天外な積もる話を全部話すとカラ爺は「ともあれ、二人が無事でよかったよ」と安心している。

 その話の中でもやっぱり雪広がオフターから聞いた話はされなかったけど、もうそれも気にしていないみたいでよかった。

「イギリスの方が、No.0の情報は多く持っているのか。しかも僕がせっかく何か月もかけて解明したことももう知られていたみたいだし。こうしてみるとなんだか骨折り損な気分だね」

「まぁいいんじゃない。ほとんど一人でやるからそんなことになるんだって分かったでしょ」

「あははっ、雪広ちゃんは厳しいな」

 僕は荷物を整理しながら二人の話を聞いていた。ふと、かばんから思い出したように一つの封筒を出す。確かこれはサイドゥンさんから貰ったもの。

「おっと、それは誰からもらったんだい?見たことある気がするけどなんだったかな」

「サイドゥンさんから貰ったんです。魔術学園の編入届みたいで、カラ爺は知ってますか?」

「それはもちろん。基本的に現代の魔術を扱う人はほとんどそこに通ったことのある人が多いと思うよ。僕も昔少しだけ通ってたし、雪広ちゃんも卒業までいたはずだけど」

「私は普通に退学させられました。その話はもうしないでください」

 彼女の機嫌をそこねてしまった。あんまりいい思いではないみたい。

「でもこれを彼女が君に渡したってことは通ってほしいってことなんじゃないかな」

「そこに行くと何かいいことがあるんですか?」

「もちろん。むしろ良いことしかないと思うけどね。僕たちの魔術の本質を見極めて適切な魔術を提供するのが魔術学園の掲げるもので、彼女みたいな一風変わった魔術にすら対応しているのが魔術学園の特徴だよ」

 確かに今まで見てきた人たちの中でも彼女の魔術は少し変わっているかもしれない。でもそういう人たちの魔術にも対応しているなら、僕みたいな先祖返りの力を持っている人にも適切な魔術を教えてくれるっていうことかな。

「僕なんだか行ってみたくなりました」

「いいじゃないか。最近仕事ばかりで疲れたと思うし、それに学校に行くのも久しぶりだろうから。ならさっそくそのチケットを使って編入手続きを済ませてしまおう」

 カラ爺は喜んで書類を掻きに自室に向かう。だが彼の手を雪広が握った。

「どうしたんだい雪広ちゃん。まさか君も一緒に行きたくなったとか?」

「う、うるさい!いいから私の分も書いておいて」

「うんうん、分かったよ」

「なんか腹立つ!」

 雪広はぷりぷりして居間を出ていく。そんな彼女をカラ爺は温かな眼で見ている。

「それじゃあお願いします」

「うん、承ったよ。来週ぐらいになるだろうから準備はしておいてね」

「分かりました」

 学校か。なんだか久しい響きだな。後悔はないけどこの世界に足を踏み入れてからそういうこととはもう縁がないと思っていたからとても嬉しい。

 わくわくしながら魔術学園の編入の日まではあっという間に過ぎていく。

「じゃあ、それそろ行こうか」

「うん」

「そうですね」

 カラ爺の運転でその魔術学園まで向かう。場所は公式情報としては乗っていなくて、推薦があった人のもとに文書として住所が送られる。それも一般の配送業者を介してではなく式神の伝書鳩という古来より伝わる方法のため基本的に場所が漏れることはない。

 とはいっても今回はカラ爺が運転で場所はすでに知っているためそんなことをする必要はなかったらしいけれど。

「時間はかかるから寝ていてもいいよ」

 車では酔ってしまうのでその言葉に甘えて寝させてもらう。安全運転を心がけているからか快適な安眠を得ることができた。


「さぁ着いたよ」

 目が覚めるといつの間にか僕だけでなく雪広も眠っていたらしい。隣で目を擦っている彼女が寝ぼけている家接の視界に映る。外に出るとそこは山の中。木が生い茂った中に適当に建てたような建物が一つ。

 随分と結界を張り巡らせているらしく、そこかしこで魔術が使われているのを感じる。

「やっぱりでかいねここ」

 適当に建てたとは思ったけどその大きさは場所が隠されているとは思えないほど大きい。建物全体が蔦などに覆われているので森の洋館味が出ていて廃墟と思われるから目立たないだけでその大きさは尋常じゃない。

「じゃあ僕はここでお別れだね。最近サボっていたつけが回ってきたのか、管轄の魔狩をやれって命令されてしまって。君たちは何も気にしなくていいから学校を楽しんでおいで」

 カラ爺はここで車を走らせて帰っていく。山道の中を突っ切っていく辺り本当に獣道すら存在しないんだなと思う。

「さぁ入るわよ」

 一度訪れたことのある雪広は慣れた様子で入り口を見つける。そこには魔力を流すための手形みたいなものが置かれていて、そこに手をかざして魔力を流すと扉が開く仕組みになっている。

 二人とも中に入るとそこには一人の女性が僕たちが来るのを待っていたように立っていた。

「お二人が家接さんと雪広さんですね。ようこそ魔術学園日本支部へ」

 彼女はそう言ってさっそく中へと案内する。廊下を歩いていると何人かの生徒とすれ違って、彼らもまた若く僕たちとさして変わらないような子供たちもいる。

「お二人は編入ということで短期で卒業資格を取ることになりますので少し多忙になるかもしれませんが、頑張ってください。きっとここでの経験はこれからの魔狩師としての知識や力になると思いますので」

 そう言って着いたのは随分と壮大な造りの扉の前だった。緊張していると案内をしていた彼女が躊躇なく扉を叩いて開けた。中も外装同様豪華な造りで、大きな長机の前に座っている人が単純な地位だけでなく魔術を扱う人としても格のある人なんだと一目で分かる凄みを感じた。

「ああ、そういえば今日だったね。さぁ座って座って」

 彼女は大きなあくびをしながら椅子から立ち上がると、その前にあるソファに腰を掛けた。向かい合うようにして座った家接と雪広に、さっき案内をしていた女性がお茶を置く。全員が一口それにつけると改まって彼女は僕たちを出迎えた。

「ようこそ魔術学園日本支部へ」

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