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アンハッピー・アライブ  作者: 八千夜
2章 神出鬼没の発条人形

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お別れに

 翌朝、二人を訪れたのは13だった。寝ぼけて目を擦りながら出た家接はすぐに目を覚まして家に入れる。まだ雪広は寝ていて、どうやらお礼に朝食を作りたいとのことだった。

「そんなのいいのに。今日で島を出るのにそんなこと。それにここを使わせてもらっただけでもう既にお礼になってるよ」

「いいの。これは個人的なお礼ということにしておいて」

 後から起きてきた雪広は机に用意されていた料理と13がいることにとても驚きながらも、三人で朝食をいただいた。控えめに言って僕たちよりも何倍も料理が上手だった。こんな朝食で朝を迎えられたので気分は快晴。最高だ。

 家接がこれ以上は僕が、と洗い物を引き受けたので二人はリビングでくつろぐことにする。その中で話題は二階の話になった。

「13はあの装置のことを知ってるの?」

「あれは……島の外の人の開発したものだと主から聞いたことがある気がするような」

 曖昧ではあるけど彼女の認識が正しいとするなら、

「じゃあこれも知ってる?」

 雪広が出したのは箱の中から見つけた懐中時計だ。13はそれを知った様子で手に取った。

「それは見たことがある。これを島の外から来た人が身に着けていた。それで、帰り際に主に渡していたのを見た気がする」

「そっか、ありがとう」

 この懐中時計はNo.0の組織に入っている証みたいなものなのかな。そんな疑問を持ってポッケにしまう。これ以上聞いて話を重くしても嫌だったから、その後は関係ない話をして気を逸らした。

「そうだ、結局どうすることにしたの?これからのこと」

「もう決めたの。やっぱり、ここに残ることにするかな」

「どうして?」

「だって、あの子たちを残してはいけないから」

 あ、そうか。あれは彼女の生命維持装置。でも彼女はこのことに気づいていないはず。

 もしかして彼女はそれに気づいていて、その上でそうしたの?

 彼女を見ると、あんなに敵対心をむき出しにしていた少女とは思えない微笑みを見せて、なにも言い返せなくなる。そうこうしているうちに洗い物を終わらせて荷物を背負った家接が戻ってくる。

「そろそろ出ないと。船が来ちゃうよ」

「そうだね」

 二人の会話はこれで終わり。家を出た二人は海岸線に向かって森を進んでいく。最後の見届け人として13が付き添いながら。

 海が見えてくると、すでに船が止まっていた。もちろんあのおじさんが乗っている。

 これで本当にお別れ。最後に雪広と13はハグをして手を振る。雪広は船に乗る前に足を止めた。

「あ、最後に言っておきたいことあったんだった」

「何を言うつもり?」

 ガッと肩を寄せられて顔をも至近距離に近づく。突然のことに家接は焦ったが雪広は笑いながら一言。

「この子は私のだから、あげないよ」

「…………。」

 顔が真っ赤になって顔を覆う13。だけど彼女も負けじと言い返した。

「別にいいですよ。でも私と家接には秘密の約束があるから、ね?」

 え?

 急に矛先が変わって逃げようとするも、もう既に船は出ている。バイバーイと手を振る彼女に二人で手を振ったが、肩が心なしか重い気がするのは気のせいかな。

「さっきの話、聞かせてくれる?」

「僕にもさっぱりだけど」

 その瞬間ホールドから抜け出そうとしたが彼女はがっちりと固めて逃がす気がない。バタバタと暴れる二人におじさんは「あんまり激しくするなよ?船がひっくり返ったらどうすんだ」とだけ言ってこっちには見向きもしない。

 結局誤解は解けたけど、まだ彼女が起こっているのはいまだに分からない。

 だが、そんなご機嫌斜めも港に着けばすべて吹き飛ぶ。

「ほらお前達、約束だ。車に乗りな。世界一うまい海鮮丼をごちそうしてやるよ」

「そうだった」

「ありがとうございます!」

「なんだ、忘れてたのか?気合い入れて取ったのになぁ」

 たらふく食べた海鮮丼は、もう大満足。スーパーの海鮮丼に満足できない体になりそうなくらい胃袋を掴まれた。二人はお礼を言うとお別れをする。漁師の家の前には車の着く音がして、運転席からカラ爺が顔を出した。

「お待たせ」

「遅いっ!」

 雪広は怒ってそのまま助手席に座る。僕はかのじょから荷物を受け取ってそれを持ちながら後ろの席に座った。

「本当にありがとうございました。これ、お礼にどうぞ」

「そんなのいいのに、悪いね。ありがたく貰うよ」

 そのまま二人は手を振って彼の姿が見えなくなる。車内には懐かしめの曲が流れていて、小さい頃の記憶が蘇る。そうだ、と思い出したように雪広はポッケに入れっぱなしにしていた懐中時計をダッシュボードに置いた。

「これ、前にも見た気がするんだけど確かカラ爺が今調べてるやつだよね?」

 カラ爺はそれを見て驚きのあまり急ブレーキをかけそうになった。

「それをどこで?」

「島のある家の二階に。話すと長くなるけどいい?」

「もちろん」

 彼女は島での出来事を彼に話す。ハンドルには手を置いたまま、彼の表情は少しづつ深刻になっていった。すべて話し終わったころにはまるで修行を終えたような苦し気な顔をしていた。

「それ、ほんとう?」

「ほんとう」

「そうか。それはごめんね。僕の見立てが甘かった」

「そうだよほんとに。ほら、家接くんにも謝って」

「ごめん」

 バックミラーを見て彼は謝った。

「別にいいですよ。こうして帰ってこられたんですから」

「そうだね。帰ったらプリンもあるわけだし」

「あははっ……」

 家に着いてからカラ爺によって蝋火会には連絡がいって、依頼とは異なっていたことも伝えられた。

 その件について後に魔狩師協会からお詫びの報酬が送られたのだが、別にそれは現地にいかないと分からないので仕方がなかったとは思う。貰えるものはちゃんと貰っておくけど。

「僕の仕事、また増えるねこれは」

 まだ一個目の懐中時計のこともあんまり進んでいないらしい。でも少しづつNo.0の実態を掴みつつあるきがする。

「僕は帰ったらとりあえず寝たい」

「私も疲れた。しばらくはごろごろしたいな」

 とりあえず今は全部忘れてゆっくりしたい気分だ。

 お疲れさま。カラ爺のその労いの言葉を聞いて、二人は静かに瞼を閉じた。

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