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アンハッピー・アライブ  作者: 八千夜
2章 神出鬼没の発条人形

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代償の無い対価

 この絡繰りの蔓延る島の実態。それを知る方法はさして難しいものではなかった。13が去ってからすぐに二人は家を出てさっきの集落のような場所をめがけて歩き出した。


 そこで彼らが作り上げようとしている封印のための魔術式を本人達に聞いたところ、誰一人としてその魔術の意味すら把握していなかった。であるならばどうやってその魔術式を刻んでいるのかという質問もしてみたが、それすら曖昧な返答でこちらがその答えに窮しているとまた何事もなかったかのように作業に戻ってしまう。


 まるで本当に機械のように動く彼らを見ていると何故だか心が痛んだけれども、そうやって働くことに関して彼らは疲れというものは伴うことはないんだろう。それをよく表すように、彼らの服を見ると酷くくたびれていてまるで休みのない作業を行っているように感じた。


「そういえば、雪広さんはさっき何をしていたんですか」


「あれは保険よ。あの家に誰かが侵入したときに知らせる防犯設備みたいなもの、っていうかまた口調戻ってるわね。まぁいいけど」


 確かに彼女には敬語はやめろと以前言われていた。意識はしているけど、気を抜くとつい以前の話し方に戻ってしまう。やっぱり敬語だと距離感覚えるのかな。なので意識してまた話し方を戻してみた。


「…………じゃあこれからどうする?あの人達にこれ以上聞いてみてもあんまりいい成果は期待できそうにないし。かといって、さっきまで案内してくれていた13はここら辺にはいないみたいだからさ。手分けして探した方が早いかな」


「やっぱりそっちの話し方の方が落ち着くわ。それはそれとして、単独行動は逆に良くない気がする。ここの電波、あんまり良くないし万が一の時に連絡取れないのは危険よ」


「そうだね。確かにこの島じゃ簡単に巡り会えなそう」


「そういうこと。で、今考えるべきはあの石を運んでいるのが本当に絡繰りなのかってことよ」


 もっともといえばもっともな疑問。彼女は本当に機械なのか。自分で機械を自称しているだけで、本当は違うなんてこともある。作業している人たちを見ていると疲れた様子を見せる人は一人もいなかったし、機械のようだけど如何せん外見では判別できない。それに機械で無くても人間で無いなんてことは十二分にあり得る。他に、気になることはと言えば、初めて13と会った時のことかな。


「そういえば雪広が最初に13に会った時、なんであんなに驚いていたの?」


「そうだ忘れるところだった。あの子、治癒魔術を使ったんだよね」


「それってすごいことなの?」


 あんまりよく分からない。イメージとして治癒魔術なんてものはゲームだとよくあるものだと思ってたから、あんまり驚きを覚えるものじゃないと思ってたんだけど。


「いや、彼女のは少し違うわ。魔術単体もそうだけど、それを機械が行使していること自体も凄すぎる。きっとカラ爺がここに来てたら見て驚くどころじゃないと思うよ」


「そんなに凄いんだ…………。でも、13はいないしとりあえず聞き込みから始めようか」


 もう一度作業をしている人たちの場所に戻って、13のことについて聞き込みを行うことにする。最初に声を掛けた少年は顔を上げて持ち運んでいたものを下ろすと、雪広の話に耳を傾ける。


「少しいいかしら。13がどこにいったか知っている?」


「13ですか?それなら山の方に向かったと思いますけど。たぶん今頃は封印されている場所で祈祷を続けているんじゃないんですか?彼女の習慣のようなものですよ」


「…………そう、ありがとう。じゃあついでにもう一つ聞かせてちょうだい。あなたたちは本当に機械なの?」


 平気で嘘を吐かれていたことが分かったが、雪広はあまり表情を変えずに次の質問をした。聞かれた少年だったがそれについては何の迷いも無いかのように答えた。


「そうですよ。私たちはこの島もともと住んでいた住民。それを主が機械へと昇華してくださったことでこうして今も生きながらえているんです」


 もう、いいですか?そう言って彼はまた作業に戻った。それは、まだこの魔術の世界というものに慣れていない僕であったとしても簡単に聞き逃していいような内容ではないことだとはっきり分かった。


「やっぱり、この島に長居するのは良くないみたい」


「僕も今そう思ったよ」


「よしっ、13を問い詰めよう!」


 決めたら即行動。彼女は少年に言われた通り山の方へと歩き始める。家接もそれについていく。最初に彼女が言っていた話だと、悪魔が封印された場所については知らなかったはず。さっきの人が話していた内容とは異なっている。わざわざ僕たちに嘘をついた理由はなんだろう。


 考えながら進んでいると、いつの間にか森の中を随分と入り込んでいた。獣道があるわけでもないのでとりあえず先頭にいる雪広は草木をかき分けながら進んでいる。でも、よくよく考えれば封印場所には定期的に行っていたのだからちゃんとした道があるはずだった。


 だが今さら下まで戻って道を探す方が疲れると言った彼女について進んでいくこと数分。草木が急に背丈を低くした場所へと出た。足下がびちゃびちゃと音がするので見ると川になるほどでは無いが緩やかに水が流れている。


「あっちから、魔力感じない?」


 立ち止まった雪広が指した方を向いて魔力を感じ取ろうとする。確かに少しではあるけれども魔力が漏れているような、そんな感じがする気がした。


「少しだけだけど感じるね」


「だよね?じゃあ、ショートカット使おうか。四方印、南」


 彼女の魔術で家接は彼女と共に魔力を感じる方角へと転移する。転移した先の場所はまた小川のそばで、今度は魔力をとても近くに感じる。辺りを見回して歩いてみると山の岩肌があったのでそれに沿って二人は歩いていく。


「ここじゃないかな」


 歩きながら家接が見つけたのは、小さな洞窟のような奥まで広がっている穴だった。それは自然にできた洞窟のようなところを隠すように一枚の大きな岩で覆われていて、人が一人ちょうど入れるくらいの大きさしか外からでは見えない。


「確かにここっぽいね。家接くんは携帯持ってきてる?」


「持ってきてるよ。ライトを使って先に入った方がいいかな」


「じゃあ、お願い。私はちょっとこの不安定な入り口を固定してからついていくから。そんなに先に先に行かないでよ」


 家接は携帯のフラッシュを使ってゆっくりと中を照らす。見た感じでは普通の洞窟のような感じがするけど、洞窟なんて生まれてから一度も入ったことが無いからあくまで感じるのは僕の主観だけど。


 そのまま奥まで光が届かないかなと思ってフラッシュを傾けながら当ててみるけれど、光は闇に飲まれて一番奥までは照らしてくれない。家接は慎重にゆっくりと足場を確かめながら進んでいく。時折生き物が蠢く音や、蝙蝠が羽ばたく音が聞こえてきてびくっとなる。


「何ビビってんの」


「うわぁ! …………別にビビってないよ」


「はいはい。それじゃあ行こう」


 突然後ろで声がして家接は声をあげた。どうやら入り口の固定は終わったみたいで、慎重に進んでいた家接を置いて彼女はどんどん進んでいく。足取りは止まらずに奥に進んでいくたびに闇はさらに深くなる。本当にここを進んだ先に何かあるのだろうかと疑問に思った時、携帯のフラッシュは洞窟の最奥を照らし出した。


「あれ、ここ行き止まり?」


「おかしいな」


 確かに魔力はさっきよりもはっきりと輪郭を帯びたように感じている。魔力の源が近いのは明らかなはずなのに、この洞窟は行き止まりになっていた。確かめるように雪広が目の前の壁をカンカンと握り拳で叩く。するとそれは思っていたよりも軽い音を響かせる。


「これ、行き止まりじゃないね」


 そう言うと彼女は両手で写真を撮るジェスチャーをする。


「こういう時は、無理矢理通らせてもらうのが一番だよね。四方印、東西」


 シャッターを斬って雪広は続けて四方印、南でその切り取った空間をどこかに飛ばしてしまう。洞窟の外で大きく岩が崩れる音が響くともに、一筋の光がその斬り取られた空間から差し込んできた。


「お邪魔しまーす」


 雪広の軽い声とは対照的に、振り向きざまの13は怒りを露わにしていた。

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