テスト期間(一)
テスト期間は暇である。いや『勉強しろよ』という意見は判る。その為に部活が一斉にお休みなのだから。だが、考えて欲しい。
普段から『授業』や『宿題』という勉強をしながら部活をしている。故に『テスト前だから』と言うだけで、それが部活を休む理由にはならない。
それに『一夜漬け』だか『ぬか漬け』だかで、自分の実力を必要以上に粉飾し、『できた気になるだけ』よりは、テストで『素の自分』をさらけ出し、己を知る。
そして、むしろテスト後に『できなかった所を復習』し、弱点を知ることで、『真の実力』を得ることの方が、より重要なのではないだろうか。
「それは『言訳』にしか聞こえませんが?」
香澄があきれている。大演説を終えた真治を睨みつけた。
「やっぱり?」
眉毛をピクリとさせ、片方の口角だけ上げて『にっ』と笑う。
そんなことは判っている。と、言いたげだ。トランペットを手入れをしながら、真治は答えた。
香澄は口を尖がらせる。
「勉強しましょーよぉ」
一方の香澄は、机の真ん中に座って訴えた。
両手を広げて机のサイドを掴む。それで自由になった両足を、交互にぶらぶらとさせている。クラリネットは出していない。
「でも、一日吹かないと三日分戻るって言うしさっ。一週間吹かなかったら一カ月戻るでしょ」
真治が計算をして説明する。しかし、香澄は頭を捻った。
「何か多くありません?」
計算が合わない。怪訝な表情で、真治を睨み続けている。
三日×一週間(七日)=二十一日<一カ月(約三十日)
その計算は正しい。しかし真治が出した計算式は違っていた。
三日×一週間(七日)=二十一日>一人月(二十日)
真治の実家では週休二日のシフト制だったのだ。
「感覚の問題かなっ」
答えのある問題を、サラリと『感覚』で片付けられてしまった香澄は、口をへの字にした。
まぁ、切り上げすれば一カ月か。そんなんで、納得できるか?
「小野寺先輩って、頭良いんですか? 悪いんですかぁ?」
香澄が足をブラブラさせながら、真治に聞いた。
今日の真治は、今までとは何だか雰囲気が違う。
「どっちだと思う?」
真治は眉毛をピクピクさせ、笑いながら香澄に聞く。聞かれた香澄は、遠慮する様子もなく、笑顔でそれに答える。
「普通!」
真治はちょっとずっこけて、バルブオイルを外してしまった。
そんな選択肢はなかったはずだ。渋い顔をして香澄を見る。




