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長い日曜日(四十二)

 店長は主語が少ない。

 しかし真治は、いつものことなので、気にしてはいない。


「はい。Zに各売り場の目玉が配置されてました」

「赤?」「はい」「了解」

 赤とは、赤と黒の二色擦りということだ。真治は作業帽を被り、鏡の前で身支度チェックを始めた。


「多目にしたんだっけ?」

 また主語のない質問だ。

 真治は、鏡越しに店長と目を合わせると答える。


「はい。青山に一束追加してます」「OK」

 そう言って店長は下を向いた。

 青山とは、この辺で経済新聞を一手に取り扱っている『青山新聞店』のことだ。

 そこに一束・千枚の、チラシの折り込みを依頼したのだ。


「あれさ、家にも来るんだよねぇ」

 店長が言いたかったのは、自分の店のチラシが、自分の店に新聞が届けられる場合にでも込みになっている、と言うことだ。

 知ってるっつーの。


「仕方ないですよ」

 笑いながら真治が答えた。しかし店長は納得が行かないようだ。

「小野寺に配る分を、他に回してくれれば良いのになっ」

「ちょっとした量には、なりますからねぇ」

 苦笑いして真治は答えた。しかし、店長は笑っていない。


 きっと無駄になったチラシ代と、機会損失額を計算し、いつもだったら『おつりを多目に渡すボケ』を五回する所を、三回にすべきか考えているのだろう。


 真治が今住んでいる、駅前商店街にある住居兼店舗が総本店で、その目の前にあるスーパーが一号店、駅の反対側が二号店。

 一駅隣の、ここが三号店。そして、ここから車で五分の所に、四号店がある。みんな『一族の経営』だ。


 ちなみに、主語がない店長は、叔父の『小野寺大樹』である。


「じゃぁ、行ってきます」

「おう。よろしくなぁ」

 真治は時計を見た。半まであと十一分三十秒。

 やばいギリギリだ。


 真治は小走りに搬入口へ向かった。

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