長い日曜日(十八)
二階の文房具店にやってきた。
広い店内をノート探して彷徨うこと三分。それらしいコーナーを二人は見つけた。手をつないだまま走り寄る。
「色々あるね」「これ、かわいいですね」
香澄が最初の一冊目を手にした。
「中はどんな感じ?」「どんなのでしょ」
日記帳と書かれたノートを捲る。するとそれは、ノートの中までかわいい絵が描いてある。
「ちょっと子供っぽいですねぇ」「小学生向き?」「はいー」
香澄はノートを戻す。手は放していたが、二人揃って左へ一歩。
「小野寺先輩は、どんなのが良いですか?」
「んー。こういう地味なのが良いかね」
真治が手にしたのは、黒い表紙のノート。香澄は、ちょっと気に入りはしなかった。イメージと違いますよ。単純にそう思った。
「こっちの、赤いのはどうですか?」
香澄が手にしたのは、赤い地に、白線で色々な絵が描かれたノートだ。イメージとしては、こっちですよ?
「それは、すごく目立つねぇ」「そうですかぁ」
趣味が合わないのだろうか。香澄は残念そうに答えた。
持ってみれば、似合うと思うのだが。
「交換する時、どうやって渡すの?」
真治の質問に、香澄がきょとんとしている。
真治はその様子を見て、『判ってないなぁ』と思って、香澄が戻した赤いノートを手にした。香澄の表情がパッと明るくなったのだが、それは置いといて、勝手に演技を始める。
「日記書いて来たよー。はいっ」
そう言って香澄に差し出す。
しかし、渡された当の香澄は混乱している。それでも『ポカン』としたまま、差し出されたノートを受け取った。
「てな感じで、部活の時、渡せば良い?」
そう言われて香澄も理解する。たちまち舞台は音楽室へと変化。
そこでは、それぞれの部員が思い思いの練習をしている。
ティンパニースティックを上に放り投げてから、落ちてくるまでに体を何回転させられるか、とか。トランペットのマウスピースをトロンボーンに挿したら凄い高音が出るのか、とか。
真治が香澄に渡してみて、というポーズをする。
香澄はノートを百八十度回転させて持ち直すと、そんな音楽室の雑踏の中、真治に渡すお芝居を始めた。
「日記書いて来ました。次、お願いします」
途端に、あれだけ煩かった音楽室が静まり返った。そして好奇の目が、一斉に香澄へと集まる。
椅子の上に立ち上がって『ヒューヒュー』言ってるのは、真衣だ。
「ねぇ? 恥ずかしいでしょ?」
真治は苦笑いして受け取った。香澄も同じだった。
どうやら音楽室で渡すのは、無理な二人である。




