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親友と(十四)

 香澄に見つめられて、真治は困った。何て言えば良いのやら。それでも、香澄の上から下までを眺めて、首を傾げた。

 そして、困り顔のまま答える。


「やっぱぁ、長い髪でしょー」「そうだよねっ! ほらぁ」

 真衣は直ぐに同調して、腕を伸ばすとパチンと香澄の肩を叩く。

 香澄も困った顔になっていた。真衣からも言われたからか、髪を触るのを止める。

 一息吸うと、手を組み左右の親指をクルクルさせながら、真治の方を見た。


「小野寺先輩は、ロングが好みなんですか?」

 小さい声で確認を求めてきた。聞かれた方の真治は困る。


 何でしょうその質問。まるで、ショートヘアの子を、全員敵に回すような言い方。

 それでもし、クラスの女の子全員が髪を切ったら? いやいや。今、そんなこと考える必要はなくてですね。えーっと。


 それでも、思い起こせば香澄から『初めての質問らしい質問』である。真治は答えに困った。ついでに、目のやり場にも困った。


「う、うん。ほら、長い方が、色々できるじゃん? 髪型とか」

 そう言って、パクリとデザートを食べる。

 ふう。これが正解に違いない。何とか乗り切った。


「どういう髪型が、好みなんですか?」

 香澄がまた聞いて来る。質問は、まだ終わってはいなかった。

 真治はまた困った。髪型髪型髪型。文金高島田。馬鹿かっ!


「好みなんですか?」

 真衣も香澄の真似をして聞いて来た。こらこら。真治は顔をあげ、二人の髪型を見比べて、余計返事に困る。


 女性の髪型は、本人が気に入っているか否かでしょうが。とも言えない。口が裂けても。それに、今裂けたら困るけど。

 もぐもぐとしている間も、二人は返事を待っている。仕方なく、口の中にあるデザートを無理やり飲み込む。


 真治は困りながらも、身振り手振りで説明を始める。

「えーっとね。普段は、こう、結んでいてね」

 真治の髪は短かったが、髪を結ぶ仕草をした。


「そんでもって、好きな人の前で、バサッ! とやる感じ?」

 そして両手を広げ、髪が広がる様を表現する。これなら『色々』でしょう。髪型の名前なんて『三つ編み』しか知らぬわっ!


 すると、香澄の顔がたちまち赤くなってゆく。

 それもそのはず。今の真治の言葉を借りれば、自分の髪型は正に『バサ後』ではないか。

 香澄の選択肢から『髪切り』は、完全に消滅した。


「こんな感じ?」

 香澄が固まっているのを見ていた真衣は、ツインテールに結んでいた赤いリボンを両手で持ち、シュルシュルと解き始めた。

 そして、首を振りながら『バサッ』と髪を降ろす。

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